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Shufful Lover!

雅功はそれを思い出すと、こういう所は可愛いんだよな、とつい口元に笑みを浮かべてしまう。
普段は我儘な俺様なのに、と。

雅功は振り返って、丸く膨らんでいる毛布を見ると、小さく微笑んだ。

だが、その笑みに陰が差し、すぐに消えてしまう。
じわり、と何か暗いそれが、雅功の中に滲み出す。

雅功はその陰に気付き、思わず舌打ちをしてしまいたくなった。

それを何と表現すれば良いのか、雅功には分からない。
しかし、今回のシャッフルが引き金になってしまったのか、時々表面化して来るのだ。

雅功は僅かに頭を振って、簡単に身支度を整え、台所で水を1杯飲む。
コップを静かに下ろしたつもりだったが、シンクに当たると意外に大きな音になってしまった。

数秒経って、ごそごそと動く音がした後、まだ半分眠たげな顔をした鳴が顔を見せた。

「悪ぃ。起こしちまったな」

「んーん。ってゆーか雅さん、これからランニング行くの?」

鳴が小首を傾げたので、雅功は頷く。
すると鳴は、大きな欠伸をしてから、

「オレも行くから待ってて〜」

と言い出し、雅功の返事を待たずに奥へと引っ込む。

やれやれと雅功は肩を竦め、シンクの縁に寄り掛かった。

もしかしたら自分は不安なのかもしれない、と雅功は思っている。

勿論鳴を疑っている訳じゃない。疑う余地など無い程、鳴が大きな信頼や好意を向けてくれているのは感じている。

けれど、シャッフルの話を聞いた時、少なからず自分は傷ついたのかもしれない。
例え鳴に悪気は無いと分かっていても。

瞬臣に対して冷静を装っていられたのは、恐らく年上としての面子と恋人としてのプライドがあったからだと、雅功は気付いていた。

お待たせ〜、と間延びした声と共に、ジャージ姿の鳴が現れた。ジャージは、雅功の部屋に置きっ放ししているモノだった。
そしてシンクの縁から身体を起こした雅功の腕に、自分の両腕を絡める。

「ねぇ、雅さん。ランニングしたらさ、キャッチボールしようよ」

と言って、鳴はねだる様な眼差しで、雅功を見上げてくる。

そうだな、と応えて、雅功は反対側の手で鳴の頭を撫でた。
鳴は撫でられるままに、気持ち良さそうに目を細める。

その甘えきった表情に、雅功の中で又、陰がじわりと滲む。

「じゃあ早く行こーよ。オレ、昼頃寮に帰んないとだから、時間勿体無いし」

「って何時間キャッチボールするつもりだ?お前は」

と雅功は呆れた様に言いながら、笑い声を上げる鳴に腕を引っ張られて玄関へ向かう。

心の中で、陰に「消えろ」と呟きながら。





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