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 夜でも駅前は結構な明るさだ。

 大型チェーン店の居酒屋は賑わっているし、ゲームセンターやファーストフード店、レンタル屋だってまだまだ閉まる時間には早い。

 遊び仲間たちと別れた華月 桜汰(かづき おうた)は、コンビニの前で地面にへたりこんでいた。

 家からは少し距離のあるこのコンビニを、桜汰はあまり利用したことがない。

 通っている高校へは自転車で通学していたし、駅まで来ることがほとんどなかった。

 コンビニは他にも数軒あって、家の近くで事足りていたということもある。

 桜汰は「はふ〜」と息をついた。

 背にしたコンビニの店内を、肩越しにチラリと見やる。

 ガラスの向こうには明るい店内。

 どこのコンビニも造りはほぼ同じだから、眸に馴染んだ安心感がある。

 観音開きのガラス扉が開いて、中から女子高生たちが出てきた。

 キャッキャと声をあげ笑みを交し合う彼女たちの手には、買ったばかりのペットボトル。

 思わず桜汰は渇ききった唇を舐める。



 咽喉渇いたなぁ。



 桜汰は足下に視線を落とした。

 履いているのは靴ではない。ローラーブレードだ。

 ストリートと呼ばれるタイプで、俗にアグレッシブとも呼ばれている。

 階段の手摺りのようなパイプ状の物を滑り降りるグラインドや、半円でU字型のジャンプ台を使い空中でトリック(技)を決めるハーフパイプを行うには適しているが、あまりスピードの出ないタイプだ。


 ※現在の日本では公道や公共の場でのインラインスケートの使用は禁止されています。


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