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死神とダンス♪
05.『忍』と『しのぶ』ぅ♪

 真夜中。とある屋根の上に俺+死神は、なぜかまったり三日月を眺めつつ、あるアパートの部屋を覗いている。

 そこには、少女と言っていいくらの可愛らしい男の子がいた。

 凡人の俺の容姿とは違う、身長が低めで、ハニーブラウンの髪、目が大きくまつ毛が長い。瞳の色はここからの位置から見えないが、絶対黒ではないことがわかる。

 杉崎しのぶ君、君はあきらかにハーフでしょう!?

 そんな身体に俺は入るのか………いや、この場合本当に入っていいのか?こんな美少年の身体に!!

 そんな俺の動揺が隣の死神には伝わることなく、どこから取り出したのか湯飲み茶碗で美味しそうに煎茶を飲んでいる。←1発殴ってもいいだろうか?



 どうやら、この数時間後にしのぶ君は亡くなるらしい………。

「時間もまだあることだしぃ〜、少し、しのぶクンのことを説明させてもらいますぅ〜」

 死神は、そう言ってニコニコ微笑み、スーツの内ポケットから黒手帳を取り出し説明する。

 死神の説明では、あきらかに鬱陶しくて進まないので要約すると、下記の通りだ。



 杉崎しのぶ、15歳、中学3年。

 図らずも俺と同じ名前だそうだ。俺は漢字で『忍』、杉崎君は、ひらがなで『しのぶ』だが。

 杉崎君は、幼い頃に母親を亡くし、それ以降、身体の弱い父親と幸せに暮らしていたそうだ。

 そんな日々を送る中、身体の弱かった父親も去年病気のため亡くなり、とうとう杉崎君は1人となった。

 その後、父親を亡くした杉崎君は、母方の金持ちの伯母夫婦に引き取られるが、どうしても今住んでいるアパートを離れることを嫌がり、1人暮らししているそうだ。



 そんな杉崎君は、今日突然亡くなるらしい…。

 何でも、心臓が弱い上に元々身体も病弱で、とうとう今日倒れ亡くなるとのこと。

 その際、この死神が何とか交渉し、杉崎君の身体を貰い受けることを了承してもらうそうです。

 先ほど、企業秘密としていた内容を説明させると(脅した)、取引材料は、閻魔帳にある罪状3つを無効とし、より早く人間に転生できるようにするとかなんとか…だそうだ。

 さて、ここで心臓・病弱な杉崎君の身体を貰い受ける俺は大丈夫なのか?と思うかもしれないが、その心配はない。

 何でも閻魔様のお力により、その辺はパッパパッと健康体に治してしまうらしい。なんとも便利なお力だ。

 まぁ、それも身体と魂の融合がされないと、完全に健康体といえないみたいだが…。

 そんな杉崎君の性格は、人見知り激しく親友と言える人も1人しかいないらいし。しかも、その1人は幼馴染だそうだ。



 幼馴染か………聞いただけで、切なくなるな…。←忍は、失恋したことを思い出しています。

 と、ここで死神から信じられないことを言われる。

「あのさぁ〜、一言さっきの契約書にも書いてあったけどぉ〜、2.身体が自分のモノとなっていない期間、周りの人に『杉崎しのぶ』の身体で『松下忍』だと正体が暴かれた場合、問答無用で地獄行き…になるから気をつけてねぇ〜」

「えっ!俺、そんなこと聞いてないよ!」

「だってぇ〜、さっき契約書にサインする前に2の事項もあるって、言おうっと、思ったらぁ〜、忍クンが私のこと睨むから言えなくてぇ〜。でもぉ〜、契約書に書いてあったからぁ〜読んだでしょ〜?………もしかしてぇ〜、読んでないとかぁ〜?」

「………」

 読んでねぇーよー!!契約書を最後まで読む前に怒りのほうが強くて、読む暇なんてなかったよー!!

 って、叫びたいけど、これは死神のせいではなく、俺のせいだし………。今更、復讐も止める気もない。

「わかった。とりあえず、杉崎君の母方の親類とその幼馴染にバレなきゃ………大丈夫だろ」

「うんうん、頑張ってねぇ〜、応援しちゃうから!ほら、応援ダンスぅ〜♪」

 そう言って、三日月を背にし、どこからか取り出した白扇子を広げて、訳のわからんダンスを踊る死神。

 死神に応援ダンスされる、俺って………幸先が、暗い気がするのは気のせいだろうか?


[後退〜♪][前進〜♪]

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