死神とダンス♪
54.優柔不断な言葉ぁ♪
ふと、頭を撫でられている感触が………雪次?
顔を上げてみると、やはり、雪次が頭を撫でていた。
「自分が嫌いか?」
雪次の問いがよくわからないが、自分のことを考えてみる。
………好き、嫌い?
松下忍時代の俺は、どちらかと言うと、平凡な性格で、特に友人ともトラブルはなく、家族想いで、学業での悩みはなく、唯一の欠点は、恋人に騙されていたのをずっと気付かず、死んでしまったこと。
それでは、杉崎しのぶになってからの俺は?
猫被ってまで、クラスメイトに溶け込み、倉吉にはまったく恋愛感情もないくせに、追っかけまわし、挙句の果てには、雪次にかなり迷惑かけている。
「………昔(松下忍)は自分のこと嫌いではなかったけど、今は………」
雪次の顔を見ながら、何とも言えない表情をする。
昔を想い浸るのは、父さんのように年を取ってからだと思っていた。でも、特殊事情の俺には、それが当てはまらないようだ。
昔を考えるたび、今の自分に自己嫌悪していく。
「忍、もう復讐なんて止めておけ」
「な、何でっ!?」
突然の雪次の言葉に俺は戸惑う。
しかも、雪次に言葉で止められたのが、今回が初めてだった。
「素に戻れば、会長に惚れられるなんて、考えていないのだろ?」
「………」
「会長を憎む気持ちを忘れとは言わない。そんな簡単な問題じゃないと思うしな。それでも、今は忍がここで生きている。それなら、これから新しい何かを掴むほうがいいと思う」
「新しい何かを?」
俺が雪次の言葉を繰り返すと、雪次も目元を和らげ頷く。
確かに素に戻れば、中身平凡な俺、惚れられる要素は容姿だけとなり………それならば、倉吉に惚れさせようなどと考えないだろう。
そして、これを決意したなら俺の復讐は果たせずに終了する。
今は11月………現在、俺を真剣に愛している人はいない…。
これから新しい何かを掴む…それは、俺を真剣に愛する者を見つけろという意味かも知れない。
そうすれば、俺はこの身体を本当に貰うこととなり、虚弱体質も治る。
雪次は、この事情を知らないまでも、いいことを言う。
が、ここで、どうしても、元の自分(松下忍)を思うと………。
何も知らず、いじらしく倉吉のことを恋い慕い、挙句の果てには、利用価値のあるただの男と思われさんざん利用され、のち事故を庇った挙句、存在を忘れられ放置………しかも、その後は死神の手違いにより魂を狩られ死亡。
真実、昔の俺はなんだったのか………。こんな可愛そうな俺、倉吉に同じくらいの痛い目にあわせてやりたい!!
それを思うと、復讐をこのまま諦めてもいいのだろうか?
自分の憎しみと雪次の言葉がグルグル頭を廻り、結局、雪次に言えたことは。
「少し考えてみる………」
こんな、優柔不断な言葉だった。
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