死神とダンス♪
45.笑顔の写真の俺★
俺は俺本来の家の仏壇の前にいる。
これをどのように表現したらいいのだろう?
仏壇には、昔、死んだ爺ちゃんと婆ちゃんの写真のほかに真新しい俺の写真。
何、平凡顔で笑ってんだよ!お前の身体もうないんだぞ!笑うなよ!
自然、涙が溢れる………つぅーと流れる涙が畳を濡らすが、それに構わず俺はがっくり肩を落とす。
そうすると、雪次が俺の頭を優しく撫で、「いい笑顔の写真だな」と、言ってくれた。
「ありがとう…」
雪次にそう素直に言えた。
涙声でちょっと恥ずかしかったけど、いいよな、今日くらい涙を見せても…。
そうしていると、母さんが冷たい麦茶を持って来てくれて、俺の涙に「あらあら、泣いちゃったのね」と、ハンカチを差し出してくれる。
母さんから受け取ったハンカチは、いつもの柔軟剤の匂いがして………今度こそ、大泣きしてしまった。
泣き止み居間に招かれ向かうと、そこにはちょうど夏休み休暇だった父と、妹もいた。
「きっと、忍はしのぶ君と、文通できて嬉しかったんでしょうね。こんなに可愛いしのぶ君の文通相手だったのだものね。でも、残念だわ。たぶん、火葬する時年賀状や手紙も一緒に燃やしてあげたら、懐かしむべき手紙が何一つも残ってないの…」
私もしのぶ君の手紙読んでみたかったわっと、コロコロ笑うボケボケ母さん。
その前に、そんな手紙ありませんから…。
「母さん、だから色々考えて、忍と一緒に燃やしてやろっと、言ったのに、成績表まで一緒に燃やしてー」
父さんは、俺の成績表まで一緒に燃やしたのを不満に思っているらしい…。
そうだよね、俺は頭だけは良かったから、父さんに持っていてもらいたかったな…。
父さん、俺、今の学園でも俺頭良いよ、1学期の成績オール5だったよ。(忍の通う学園は5段階評価)
「きっと、お兄ちゃんは、しのぶ君を女の子と間違えてナンパしたのよ!私もしのぶ君みたいな可愛い女の子に生まれてくれば良かったのに…」
いやいやいやいや、妹よ!君は何か誤解してないかい?杉崎君は『男の子』!!美少女容姿でも付くべきモノは、付いてるから!!
いつもの家族にほっとする。
自分の部屋に行くことはできないけど、こうして居間に通され、お客様としてみんなの顔を見れただけでも嬉しい。
俺がいなくても、みんな笑っている。うん、良かった。
仏壇の前で大泣きした俺は、雪次とともに居間に通され、軽く自己紹介しただけで、フレンドリー状態………うん、これもいつもと変わらない。
うちの家族は平凡で、誰に対しても友好的で近所付き合いも良い。母さんだけは、それ+『ボケ』が追加される。
それから、もう見ることもないと思っていたアルバムを見ることになって、雪次も興味津々で見ていた。
俺も懐かしくて………また、泣けた。
帰り際、母さんが俺の頭を撫で「また、いつでも遊びに来てね、しのぶ君」と、言われた。
俺はこれ以上泣くまいと、首を縦に振るのが精いっぱいで………雪次はそんな俺の代わりに「是非」と答えてくれた。
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