死神とダンス♪
09.ピンチですぅ♪
ちゃんと目が覚めた………これには語弊があり、俺は死神と変な空間で【杉崎しのぶ物語ぃ〜♪】を猛勉強し、3日目にして無事生還することに成功した。
相変わらず身体は動かないが、目を開けると白い天井の部屋で、ベッドに寝ている感触、消毒液のような匂い。確実にここは病室のようだ。
ちなみに今日は、クリスマス・イヴ………閻魔様の計らい(?)により、これより1年間までに『俺を本気で愛する人が現れなければ、俺は地獄行き』になる。
来年のクリスマス・イヴ………その時、俺はこの地上に存在しているのだろうか?傍には、俺を愛する人がいるだろうか?
………いや、この1年の間に『復讐』して、あとは、マジ恋人でも作り、来年のクリスマス・イヴにはラブラブしまくりじゃーーー!!
しばらくして、ハニーブラウンの髪に杉崎君と似たような女性が病室に現れ、俺を見た瞬間、杉崎君の名を叫び、涙を流して喜んでいた。
俺は、その様子をボッーと眺めているが、あわただしく次々に現れる医者や看護師が身体を触ったり、質問をしてくるので「身体が動かない」と、だけ話し、今の状況を冷静に考えてみる。
病室にいる杉崎君似の女性は、杉崎君の伯母さん(杉崎君のお母さんの姉)。【杉崎しのぶ物語ぃ〜♪】の写真入り資料を読んだので確認できる。
身体が動かない理由は、死神が言うところの身体に魂がちゃんと定着していないからなのだろう。
それも、数日で一応動けるようになると聞いているので、これも問題がない。問題は………。
そこまで考えていると病室の扉が開く。
ガラガラガラ…。
そう問題は、今扉から入って来た人物………小田桐雪次(おだぎり ゆきじ)、15歳。彼に如何にして、俺が俺(松下忍)であるとバレないようにするかだ!
小田桐君は、俺の側に近寄る。俺は緊張の面持ちで構えるが、彼は何も話さず俺を見つめるばかり………。
「???」
『無口』と、資料に書いていたが、この反応はどうなのだろう?仮にも幼馴染というべき俺(外見、杉崎しのぶ)を前にしても、無表情で何もしゃべらない。
オイオイ、今まで俺は意識不明の状態で、しかも、倒れていた時、連絡してくれたのはお前だろ!!何とか言えよ〜〜〜!
はっ!?もしかして、はじめに俺が声掛けるのが正解なのか?
俺がそんな緊迫した状況をかもし出していると、杉崎君の伯母さんがニッコリ笑い。
「雪次君、心配しすぎて声が出ないようね。しのぶ、身体は動かないけど声は出るのでしょ?雪次君に声を掛けてあげて」
なるほど、やはりこちらから声を掛けるべきか………たしか、資料にあった杉崎君のしゃべり方は………。
「雪次、ありがとね。僕、今身体は動かないけど、しゃべれるから何か話してくれる?」
これで、首を傾げたりするといいらしいが、今は身体が動かないので無理………それでも、これを俺が言うハメになるとは………キモイ。『僕』なんて何年振りの呼称だ。
「しのぶ………何か雰囲気変わったか?」
「えっ?」
これには、ビックリ!!てか、何々、俺のしゃべり方って杉崎君に似ていなかったのー!?
初回でバレる→地獄行き→復讐できない→地獄行き→俺馬鹿→地獄行き………(エンドレス)。
よくわからん図式を頭に浮かべて、動かない身体から冷や汗をダラダラ流していると、ここで助け舟が…。
「こらこら、生死の境をさまよった、しのぶ君に何を言うんだ。さてこの辺で、しのぶ君はドクターストップだよ。もう一眠りして、明日またお話ししよう。皆さんもそれでいいですね」
医者の言葉に杉崎君の伯母さんは頷き、小田桐君は無表情のまま俺の側を離れる。
ひぇ〜〜〜、何とかバレずにすんだか?
杉崎君になって1日目………もしかして、すでにピンチかもしれない。
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