LOVE GAME ■Battle.30 悪魔コーチの家を訪ねれば、対応してくれた人は、なぜかこちらを値踏みするように見る男。 たぶん、悪魔コーチと似たところがあるので、家族と思われるが、なぜにオレにガンたれるのか? で、勢いでここに来てしまったオレは、もちろん、見舞い品などなく…更に、こんな険悪な雰囲気の男に何を話していいか。 「えっーと、悪…斉藤先輩の………お見舞いに…。あ、オレは1年の明津昴です!」 「へぇ〜………て、あれ、『アクツ』って、あの『明津昴』!!」 悪魔コーチの家族らしき人物の驚きは何を意味するのかさっぱりだ。 それでも、『明津昴』はオレであり、O大学サッカー部の斉藤先輩の後輩の明津ですが…としか言いようがない。 が、これで、いきなりガハリッと抱きしめられた、オレ。 何が起ったのかわからないが、玄関の框の段差で抱き合うオレ達は異常だろう。 ちなみに、玄関の扉はきちんと閉められているので、変な噂は立たない…はずだ。 「四季をサッカーに戻してくれた君のことをどれほど、僕達家族は、どんなに感謝したことか…」 悪魔コーチの顔をより大人っぽくした感じの好青年………何年後の悪魔コーチもこんな風になるのか? 抱きしめられた状態であるにもかかわず、なぜかこんなことを考えてしまう。 それから、普通に対応してもらい話していたら、本当にとんでもないことが判明して…。 対応してくれたのは、悪魔コーチ兄で、名は菱沼淘季(ひしぬま とうき)と言うそうだ。 苗字が違うのは、両親が離婚しるからっと、森キャプテンから聞いたことを再度聞かされた。 悪魔コーチは母親に、淘季さんは父親に…。 それが今一緒にいるということは…。 「四季が高校3年の時、母が亡くなってね…。それで四季は再び菱沼家に戻って来たんだけど、どうしても『菱沼』には戻りたくないってね」 「どうしてですか?」 「四季の怪我のことは、何か聞いてる?」 玄関で話すには重い話なので、頷き「少し…」と答える。 「そう、聞いたんだ。それなら、少しはわかるかな…。四季は過去の『菱沼四季』であった時の栄光を忘れたいんだ。だから『菱沼』に戻るのは嫌だと考えている」 これには、どう答えていいかわからない。 オレは悪魔コーチほどの怪我を負ったことはない。 だから、簡単に意見を述べることはできなくて、沈黙するしかなかった。 「君には感謝しているよ。怪我をして以来サッカーの『サ』の字すら受け入れられなかった四季が、君を見た瞬間、考えを一変させたんだから…」 「え!?」 「U−17の○○国の試合をテレビを観た、四季が…『後半残り数分で明津投入!あの時、明津のポジションが司令塔MFだったら、あの鋭いパスは通っていた!!明津は将来全日本の要になる選手だ!!』………耳にタコができるくらい聞かされた台詞だよ…」 淘季さんは、心底ゲッソリしたように呟くが、これはアノ悪魔コーチの台詞のようで。 しかも、悪魔コーチに似た淘季さんの笑顔で「四季は明津昴君の大ファンなんだ!」と、そう言われたら、ものの見事に顔を赤くするオレが出来上がる訳で…。 [■負け][勝ち□] [戻る] |