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男前なんかじゃない!!
14.病弱な男前。

 4月、桜咲く暖かい日差しが籠もれる春、ぼくはY高校の入学式を迎えた。

 しかし、ぼくは入学式に参加していない。

 途中まで行ったところで、同じように入学式を迎える女子生徒を見た瞬間、酷い眩暈に襲われ、そのまま途中下校した。

 一緒にいた母さんは、ぼくを支えるようにタクシーに乗り帰宅したのだけど、それを見ていた一部の女子生徒は、ぼくのことを『病弱な男前』と、学校で称してくれたおかげで、授業中いきなり倒れても、皆不思議に思わないで過ごせていた。

 もちろん、倒れた理由は、授業中いきなり女子生徒に肩を叩かれて話しかけられたからだ。


 ぼくは、Y高校で極力人と関わらないように過ごしていた。

 いつ、女子生徒とに触られるのかわからなかったし、男子生徒に自分の性格を馬鹿にされるかもっと、思うと、話し掛けることができなくなっていたから…。

 そんな日々を1ヶ月過ごし、とうとう運命の日がやってくる。






 授業も終り、今日も無事に学校生活を終えた喜びを噛みしめ、玄関ホールで靴を履き替えていた時、ある女子生徒に声を掛けられた。

「宗次郎君、私のこと覚えている?」

 『誰?』一番はじめの感想はこんな感じ。

 ぼくが不思議そうにしていると、女子生徒(たぶん先輩)は、なかなか思い出さない俺に痺れを切らし、自分から説明する。

「受験のあと、一緒にカラオケに行ったトモミよ!」

 あぁー、そう言えば、そんなことあったな。

 しかも、思い出してみれば、そのせいで、みっちゃんと喧嘩したんだよね。



 この先輩に対して、良い印象のないぼくは、「何のようですか?」と、そっけなく尋ねる。

「あ、冷たい。…まぁ、いいや。宗次郎君、今誰とも付き合ってないのでしょう?なら、私と付き合ってくれない?」

「お断りします」

「即答…。ちょっとは考えてくれたって………」

 ぼくがあっさり断ると、自分に自信があったような先輩は、目に涙をためながら、ぼくを上目遣いで見てくる。



 でも、こんな仕草は以前ぼくもみんなに何かしてもらう時に使った技なので、そんなにうろたえることもなく…。

「それじゃ、もう用事がないようなので、これで失礼します」

「ちょ、ちょっと待って!」

 先輩の側を早く立ち去りたくて、逃げるように扉に手をかけると、腕を掴まれ、一瞬眩暈が襲う。

 それでも何とか耐えて、「離して下さい」と、言うと、今度は強引にぼくに自分の身体を押し付けるようにしてきて………。



 それでもうダメ………。そんなことされたら、マドカさんのこと思い出しちゃって………。

 その場で倒れた………。

 その時、先輩の悲鳴とどこか遠くから、みっちゃんの声が聞こえていたような気がした。



 気付いたら保健室…。これで、もう、何度目だろう…。

 『コレ以上、コノ学校ニイラレナイ』

 その夜、ぼくは家族に転校したいと告げる。

 家族は、ぼくの限界を肌で感じていたので、快く了承してくれた。

 転校先は、父さんの知り合いの全寮制の男子高校で、お坊ちゃん高校らしい。



 不安があるものの、転入試験に合格すれば、授業料免除とか食堂が半額で利用できると聞いたので、はじめて本気で勉強することにした。

 勉強が少し遅れがちのぼくは、それから2週間…勉強と対人恐怖症の克服、そしてなぜか自分の性格改造に費やすことになる。

 兄姉が言うには、男子校に行くとそれなりに厄介なことになるから、勉強が必要だと…。

 何が厄介なのだろう?


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あきゅろす。
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