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うさぎの初恋
◆32.長耳VS長耳親衛隊、再び。

 誰が旧校舎の家庭科室で再び、長耳VS長耳親衛隊の戦いの生観戦することを予想していただろう?

 会計の里美&書記の城ケ崎先輩は室内の隅にて傍観していたが、それでも生徒会本来の職務を全うしようと、家庭科室で伸びている長耳親衛隊以外の隊員をこそこそ廊下に運び出しているのが見える。

 廊下に運び出された、伸びている親衛隊は、各々の親衛隊員が頭を下げながら保健室に運び込んでいるらしいと推測するが、無傷な親衛隊員がこの現場(家庭科室)を除き見ることはないが、見たらさぞかし失神者が増えたことだろう。

 なにせ、長耳もそうだがこの長耳の親衛隊長である好野も黒笑み全開で微笑んでいるあたりが、妖怪の化かし合い並にそら寒々しいものがあった。



「お久しぶりですね、長耳サマ」

 ハートマークでも付きそうなくらい、ニッコリ笑みを浮かべている好野であるが、長耳は黒笑みを消し無言のままだ。

「笑みは見せてもらえませんか…。ワタシは先ほどの黒笑みを浮かべている長耳サマが大好きなのですが…」

「それは、残念でしたね。私は何もあなたを喜ばされるために微笑んでいる訳ではないで。で、この場での言い訳云々は何かありますか?」

「言い訳ですか?何のことでしょう?」

 すっとぽけている好野は、明日の天気はなんでしょう?くらい、気軽に言うがそこは長耳が許すはずもなく。

 ちなみに、俺は絶対許さん!!

「親衛隊による制裁の現行犯…こう言えば、わかりますよね、好野隊長」

「まさかぁー、ワタシ達が制裁なんて!!ただワタシ達は、うさぎ君の『ネコ嫌い』を治そうとお手伝いしていただけで。ね、キミ達もそうだよね!」

 好野がこういうと、好野と一緒にネコ衣装になっている親衛隊達も「えっとー、そうです」とか「そんな感じだったかな?」など、曖昧な返事を返す。



 これでは、まるっきりの嘘だと丸わかりであるが、俺がこう思うのだから長耳のほうでも…。

「で、真相は!?」

 長耳が珍しく怒りを含めて強く言うと、好野以外の親衛隊員はピクッと身体を揺するなり、真相を話し始める。

「は、はい!!初めは、猫屋うさぎをこのネコ姿でいじめようと追い込みをかけていたんですが、思いのほか効果があり…」

「それを見た好野隊長が、Sモード全開になって追いかけましたら、ボク達もつられて追いかけちゃって」

「えっと!でもでも!暴力行為とかしてなくて!!伸びていた他の親衛隊員達も猫屋うさぎが全員伸しちゃって、ボク達はそれが面白くなってまた追いかけて…」



 ようするに、この家庭科室で伸びていた奴は、うさぎが何かしらの方法で伸したと…。

 たぶん、恐慌状態にあったうさぎに聞くのは難しいので、伸びている親衛隊員にあとから事情を聞くしかないな。

 生徒会会長である俺はそう結論づけて、胸に抱きしめているうさぎの頭を優しく撫でてやる。

 が、最後の好野台詞に何とも言えない気分になったのは、俺だけではないだろう。



「あの怯える姿がなんとも言えなんだよね。猫屋うさぎ(うっとり)………うちの親衛隊に入ってくれないかな」

「好野君…」

 好野の台詞に怒り心頭だった長耳の怒気も薄れる。


[*の後退]の前進*]

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あきゅろす。
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