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うさぎの初恋
◆31.うさぎと再会。

「うわぁ〜〜〜ん!!」

 妙に白っぽい(粉っぽい)視界の家庭科室を涙全開で駆け寄って来る、うさぎ。

 泣き顔も可愛いなぁ〜(デレデレ)と、俺はうさぎを迎えるべくスタンバイオッケーとばかりに、両手を広げる。

 が、次のうさぎの台詞に。

「雄介ぇ〜〜〜、ネコが、ネコがいきなり襲ってきて怖かったよぉ〜〜〜!!」

 右隣にいる草間に今まさに抱きつこうとするうさぎの姿に、素早くTOMIYAMA印の新商品『モコモコウサギぬいぐるみ』を制服のジャケット内ポケットから取り出す。

 この商品は現段階では試作品ぬいぐるみだが、更に研究を重ねそのうち、うさぎのために『モコモコウサギ枕』に改良する予定ではある。※うさぎがウサギ枕を欲しがったため開発中。

 まさか、ここで出すハメになるとは思わなかった。

 しかし、効果は絶大で…。

 うさぎは雄介の胸に飛び込む1歩手前で止まり、俺が持つ『モコモコウサギぬいぐるみ』を発見した途端、90度ターンを華麗に決めこちらに走り寄る。

「朱里ぃ〜〜〜!!怖かったよぉ〜〜〜!!」

 俺に抱きつくと同時に、『モコモコウサギぬいぐるみ』を自らの手に収める早業を決める。



 草間の手が空振りして、俺とうさぎを恨めしそうに見ているのが、そんなの気にしない。

 ついでに、この演出とは思えない白っぽい視界の部屋もこの際脇に置いといて、これ幸いとうさぎをおもいっきり抱きしめ、めったにない至福のひと時を堪能する。

 時折り、うさぎの涙声で「ネコがぁ〜、ネコがぁ〜」と訴える声が聞こえるが、さて、学園内に動物を飼育していたか?と、首を傾げていると、俺の前方より冷気が漂っているような気が…。

 いや、気のせいではない。

 目を凝らしてみると、たしかにうさぎが言うようにネコがいた。

 ………いつもは宝塚風なのに、それを止めている長耳の親衛隊。

 なぜに今キャ○ツモドキの恰好をしているのだ?

 疑問符いっぱいだったかが、瞬時にうさぎの弱点を思い出してしまい。←うさぎの弱点=ネコ。

「長耳!完膚なきまでネコどもに報復しろ!!」

 若干芝居がかってしまったのは、演劇同好会の悪影響か?

 しかも、長耳まで黒笑み全開で「了解」と簡潔に返事するあたりが、このあとの展開を更に激化する事態になるのだが、のち、別な最悪な形で終焉を迎えることになる。


[*の後退]の前進*]

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あきゅろす。
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