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うさぎの初恋
◆28.長耳VS副会長親衛隊。bQ

 ジャリッと足を進めるごとに、笑みを深くし目からビームを出している、長耳。

 殺気ただ漏れで、かなり後方にいるはずの俺達なのに、半泣きになりそうだ。

 草間だけは、なぜかこの光景を「凄い!!俺も立川先輩を見習わないと!」と、尊敬のまなざしで見ているが………まぁ、いい、とりあえず、若干目的を忘れそうになっている(旧校舎の家庭科室に向かうこと)ことを遂行させてくれ!



 しかし、長耳からは予想外の言葉が漏れていた。

「そこを通してくれるなら、6月にある文化祭の演目の許可を出しますけど、どうです?」

「はぇ?な、長耳サマ?」

「たしか、演目は『ドロドロの愛憎劇』をヅカ調でってことでしたよね。私は新歓での皆様の『ベル○ら』も大変気に入っていましたから、許可してあげたかったのですが、他の役員から苦情が来て………それでも、ここを通してくれるのなら、私が何とかしますよ」

 長耳が嘘を吐きはじめた…。



 英修では、進学校ということもあり、早めに文化祭やら体育祭やらの行事を済ませてしまう傾向がある。

 その中で、6月に文化祭があるのはこの辺の学校では珍しいものだが、上流階級も多いので、お披露目も兼ねて早めに行われている。

 中でも目玉はやはり英修にしては珍しい(派手)人種が多くいる演劇同好会。

 だが、その演目がまたしてもヅカ調ということもあり、生徒会一丸となって『却下』と、いうことが決まっていた。※本当はゆりだけは賛成したけど、長耳の眼力でなかったものとされた。

 もちろん、『ドロドロの愛憎劇』と言った段階で、ヅカ調でなくても『却下』するのは常識だが、ここで、演劇同好会っと言っただけで強く『却下』と唱えたのは、長耳本人だ。

 それに、新歓の『ベル○ら』を見て、魂が抜けた状態になったのも長耳で…。

 長耳よ、お前何考えているんだ?



「部費」

 長耳のその一言で、ピクッと長耳の親衛隊達は肩を揺らす。

「文化祭での劇公演収入でそれなりに稼がなくては、今使っている器材のメンテ代、衣装、化粧代、その他、モロモロの費用が削られ、ヅカ調を止めなければならないですよね」

「そ、それは………」

「別に演劇同好会は、同好会会長が替わるたび、ミュージカル調や熱血調やら様々替わりますから、それほど支障はないようですが………部費が得られない状況であれば、文化祭後の演劇同好会はどのように変わるのでしょうか?」

 長耳はそのあと、ふっふっふと勝ち誇ったように笑い、演劇同好会1人1人を見回す。



 長耳VS副会長親衛隊の決着はあっけなかった。

 副隊長である隊員が、頭を深く下げ「文化祭の件お願いします!」と叫ぶなり、他の隊員も長耳のために花道を作るように脇による。

 あとは、お約束通り…。

「さぁ、皆さん、道ができましたよ。うさぎ君を早く迎いに行きましょうね」

 長耳のこの台詞で、俺達まで長耳の親衛隊に頭を下げられながら花道を通る訳で…。

 何だが、うさぎを助けに行く前に、疲れがドッと押し寄せてきたような。

 と、とりあえず、うさぎ、待ってろよ!今助けに行くからな!!



 こんな気合十分な俺だが、家庭科室に向かう廊下で突然うさぎの悲鳴が聞こえ、廊下を全速力で走ることになる。


[*の後退]の前進*]

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