うさぎの初恋
◇うさぎとショッピング bP◆
某デパートにて行われているウサギグッズショップ。
期間限定と書かれたチラシを満面な笑みで持って来た猫屋うさぎ(ねこや うさぎ)を見た瞬間、草間雄介(くさま ゆうすけ)の運命はもうすでに決まっていたのかも知れない。
ちなみに、企画会社が日本一玩具メーカーと実力を誇る『TOMIYAMA』と書かれていれば、否応なしにその後の展開も見えて来る訳で…。
ある日の休日。
家を出て電車に乗り、某デパートへ。
うさぎは迷うことなく目的地へ進む、雄介の手をムンズッと掴みながら…。
雄介は力強く掴むうさぎに文句は言わない…ではなく、文句を言っても聞いてもらえないことが大な訳で、あえて発言を控えている。
あ、あの親子楽しそうだな〜。
あそこの女の子俺の好みだ!可愛いな〜。
雄介は、うさぎに引っ張れながらも現実逃避するように周りを見ながらほのぼのしている。
まるで今が一番くつろげる時間だと確信しているように…。
そして、それはあながち間違いではないと確信したのは、ショーケースにかじりつくようにウサギグッズに目を輝かせているうさぎを見た瞬間。
ショーケースにかじりついているうさぎは、雄介そっちのけでショーケース内にあるウサギ時計を見ている。
その時の雄介は、うさぎの手から逃れることはできていたが、何かに張りつけられたように足が動かない。
頑張れ、俺!!今この場で逃げなければ、俺に明日はない!!
と、心の中でいつも思うのだが、なぜかいつも地に足が張り付けられたまま、何かのプレッシャーを感じていた。
ゆーすけっくん☆今ここで逃げたら、ウサギ100羽を君の部屋に住まわせるよぉ〜☆ちなみに☆ゆーすけくんの服は全てチモシー(牧草)で編み込まれたのを着せるからぁ☆
げ、幻聴が聞こえる〜〜〜!?
雄介は首をあっちこっち振り周りを見回してみるが、そのような声を上げている者はいない。
ほっと胸を撫でるが、幻聴とほぼ同じ声が今度はリアルで聞くことになる。
「ゆーすけぇ〜、僕これが欲しいなぁ〜」
ギクッとしつつも、声がした方に油の切れた玩具のように首を向けてみると…。
潤んだ目、唇はプルプルして物言いたげ、紅潮した頬は思わず「いいよ、買ってあげるよ」っと、血迷って言いそうになるが!
「ダメ!!絶対ダメ!!うさぎは自分の小遣いで買えよ!」
全力で首を振り、「うさぎは幼馴染!」と10回高速で唱え、且つ、「うさぎは女の子じゃない!!」と更に20回唱え、先ほど出そうになった言葉を飲み込む。
うさぎは普段、ぼっーとしていることが多く表情はあまり動かない。が、こと『ウサギ』が絡めば話は別だ。
目の色は嬉々爛々とし、普段使わない表情筋はこれでもかと言うくらい笑顔全開の可愛い顔になる。
過去、うさぎはその笑顔のせいで、母性本能をくすぶられた女子生徒から告白されたことや一部男子生徒にも………なんてこともある訳で…。
確かに、うさぎの笑顔はある意味破壊力抜群だと思う…。
現に俺は「ダメ!」と言いつつも、頭の中で『財布の有り金を使えば買えるかも…』とか、考えてしまうのだから。
[*の後退][の前進*]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!