うさぎの初恋
◇12.条件。
会長が血を吐いた………訳ではなく、会長が鼻血を噴きだした事態に固まる面々。
はっ!!いやいや、それより何とかしないと!!
ぼくは慌てて、そのへんにあったおしぼりやらナプキンを会長の鼻に当てるが、それと同時に会長と目線が合えば………ブッハッ!
会長がまたしても鼻血を噴いた。
何なんだよーーー!!
もうどうしていいかわからない事態にオロオロしていると、長耳先輩がぼくの手に持つおしぼりを代わりに持ち、会長に同情的な視線を向けている。
「うさぎ…頼むから、今の台詞をここ(英修)で吐かないほうがいいぞ」
「何が???」
「アブナイ方向に聞こえなくもない気がするから………たぶん、会長は………いや、何でもない」
雄介の言葉の意味はよくわからん!さっきの台詞でおかしいことはないよね?
ただウサギの山に行きたくて、会長の頼みなら何でも聞きますってことだし…。
長耳先輩が雄介に同調するように頷いているが、ぼくは訳がわからなくて、ずっと首を傾げ続けるしかなかった。
それから数分後、漸く、会長の鼻血は止まり、本題に入る。
ぼくはそれを椅子の上で正座して聞くのだが、その様子に皆なぜか苦笑いしていた。
「ウサギの山はいつか連れて行く…として、条件がある」
「はい!何でも…ファガフゥガ」
『何でもします!』の台詞は、なぜか雄介に口を塞がれているので、最後まで言えない…。
「その台詞はいいとして…。俺のことも『会長』ではなく『朱里』と呼んでくれると嬉しいのだが…」
会長が顔を赤くしていう理由は分からないが、そんなことならお安い御用だ!先ほど、雄介から注意を受けているので、『先輩』も付けて…。
「朱里先輩でいいですか?………朱里?………しゅり………『シュリ』って、あのー、もしかして、あの時の『シュリ』?」
ぼくの言葉は確認するまでもなく、朱里先輩の満面の笑顔で正解だとわかる。
「えっ!?あの、シュリなの!!ぼく近所の子だと思って一生懸命探したのに見つからなくて…。えっと、そうそう!!『殿』は元気だよ。人の年齢に直すと70歳くらいのお婆ちゃんだけど、頭良くてきれい好きで…あと、えっーと」
「うさ、落ち着いて。全部聞くから」
息継ぎなしのノンストップで話すけど、それは嬉しいから!探しても探しても見つからなかった人が目の前にいるんだ、興奮しないほうがおかしい。
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