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うさぎの初恋
◆09.初恋の君。bQ

◇◆【長耳視点】◆◇

 よし、あとは決定的な証拠を掴めば…。

「うさぎ君、よければ、その黒いウサギの名前はなんと言うのかな?」

「『殿』です…。本当は女の子だけど、当時のぼくとぼくと一緒に『殿』を見つけた子で考えて付けて…。でも、その時まだ性別がはっきりしなくてわからなくて、こんなかっこいい名前になりました」

「クスッ、何なら名前を変えてしまえば良かったのに」

「いいえっ!あの時、『殿』がたくましく生きるようにって付けた名前です!変えるなんて、ウサギ好きのあの時の子に申し訳ないです!」

 どうやら、うさぎ君の都合よく、当時の朱里はウサギ好きと認定されているようだ。

 否定はしないが、『ウサギ好き』ではなく、『うさぎ好き』と訂正するべきか?………迷いどころだ。



「それでは、これで最後の質問。うさぎ君と一緒に『殿』君…ではなく、『殿』ちゃんを見つけた子の名前は覚えているかい?」

 この質問に、うさぎ君は元気に答える。一点も曇りもなく、戸惑うことなく真っ直ぐに…。



 朱里、良かったねと…いうべきなのかな?

◇◆◇◆◇






「『シュリ』!!その時の子は『シュリ』って、名前です!」



 この言葉を聞いた瞬間、この場所が学校の食堂とか今、目の前にウエイターが食事を持って来ているとか、全て関係なくなった。

 ただ抱きしめたくて、やっと逢えたのが男の子でもやっぱり愛しいと感じる俺は、男子校に毒されたのかも知れないと思うより先に、テーブル越しにうさぎを抱きしめていた。

 テーブルがデカすぎて、うさぎの首をこちらに引っ張っているような感じがするが………うん、俺が幸せだからそれで良い!

 隣で長耳の焦った声で「朱里!うさぎ君の首が!?」とか、草間の「うさぎ、生きているかー?」なんてのんきな声が聞こえるが、そんな雑音など聞こえないくらい、俺は幸せをかみしめていた。←うさぎの首を絞めながら。



 数分後…。

 首を左右に振り、少しゲッソリしているうさぎ…。

 す、すまん…喜びのあまり、うさぎをお月様に還す(訳…天国に逝かせる)ところだった。

 全力で謝罪し、食事を開始するが会話の糸口がつかめない。うさぎの冷たい視線を感じるせいで…。

 さすがの長耳もこのフォローはできないのか、無言だ。


[*の後退]の前進*]

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