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うさぎの初恋
◆06.状況説明求む。

 なぜかこの事態にまったく怯えず、めげずにいる生徒…。

 これから、この生徒は制裁という名のいじめが待っているはずで、普通であれば泣くなり、俺に謝るなりするはずなのだが…。

 ちらりっと長耳と見れば、現実には還ってきているはずなのに、この状況にどうしたらいいのか戸惑う表情を浮かべている。



 一方、この状況を作りだした生徒は、俺の玩具を手にしたまま、下から上がって来た生徒に満面な笑みを見せている。

 頼む………誰か状況説明を!!っと、俺が思うのは、間違っているのだろうか?



「朱里、いったんここは食堂の混乱を治めないと…あの生徒達もそうだけど、生徒会の仕事にも支障がでるかもしれないよ」

「長耳、それは分かるが………なんと説明すればいい?俺達のほうがこの事態に戸惑っているだろ?」

「………できれば、あの2人に聞きたいけど…。どうやら、朱里に抱きついた生徒はいまだこの状況に気付いていなようだね…」

 長耳と2人の生徒を見ながら話すが、その様子は俺も見て取れる。

 俺に抱きついた生徒は、何やらあとから来た生徒に一所懸命、玩具の説明を嬉々としていて………聞いている生徒はどうやら現状がわかっているのか、顔に手をあてたまま項垂れているようだ。

 どうやら、項垂れているあの生徒にあとで説明してもらうしかない。

 しかし、そのためには、この食堂の混乱なんとかしないと…。



 そう思っていると、長耳が俺にウインクして、「ここは任せて!」と、言う。

 なぜか悪い予感しかしない………長耳、頼むからまじめにやってくれ。



「皆さん、静かにして下さい!!今のこの状況を説明します!!」

 2階席の手摺に手をかけ、下にいる生徒に聞こえるように大きな声を張り上げる、長耳。

 長耳の言葉に食堂は再び、沈黙が下り、皆こちらを注目する。

 一部、いまだに騒いでウサギ談議に花を咲かせている奴がいるが、ここは無視だ!!



 長耳は生徒達が沈黙すると、この状況の説明に入るが…。

「今、ここに来て生徒会長を抱きしめた普通科の生徒は、会長の離れ離れになっていた幼馴染です。もう、十数年逢うことも叶わず…やっと再会してみれば、お互い身分が違うためすれ違い…今やっと理解し合い、感極まっての2人の行動だったのです!」

 オイ!長耳、いつこの普通科の奴が俺の幼馴染になったんだ!!

 思わず声に出そうになるが、長耳は目線でそれを制す。

「そして、次にこの場に上がって来た進学科の生徒は、私があることを頼んでいた生徒であり、害はありません。もちろん、進学科の生徒に頼んでいたことは、普通科の生徒に身分違いであっても朱里…会長と仲良くしてくれということで…」

 スゲー長耳、生徒の名前を明らかにすることなく、話しを進めている。しかも、ここにいる生徒に自分達を重ね合わせるように同情させるとは…。



 長耳の作戦は成功!と、いうか、同情意見が多い。

「だよね…。進学科のボクでも、特進科(特別進学科)で生徒会長の朱里さまと幼馴染なんて…誰にも言えないかも…。それが、普通科の人じゃ、なかなか言えないよね」

「朱里さまと幼馴染………でも、身分違い。きっと、色々な人に反対されたのかな?」

「うん、きっとそうだよ。でも、やっと仲直りして…ぐっすん、会長良かったね」

 ここまですんなりことが運ぶと返って生徒達にすまないっと、思ってしまう。

 今更嘘とは言えないので、これから口裏合わせをするしかなく…。

 はぁー。

 なぜかため息が漏れる中、いまだウサギ談議を繰り広げている生徒に足を向ける。


[*の後退]の前進*]

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