お題小説
軽いキスを何度も(三阿)
オレの恋人はキスが下手くそだ。
初めてのキスは付き合って一ヶ月を過ぎた頃。三橋の部屋で一緒に勉強していた時だった。
「あああ、阿部 君っ!キス…しても、いいっ!?」
「……聞くな、バカ」
雰囲気のカケラもないその物言いに、オレは答える代わりに目を閉じた。
オレの指をきゅっと握る三橋の手は冷たくて、緊張がそのまま伝わってくる。
目を瞑っていてもわかる、痛いくらいの視線。震える吐息を感じるほどの距離に三橋の顔がある。
ガチッ
「いてっ!……!?」
衝撃と共に唇に痛みが走る。目を開けるとそこには、涙を浮かべながら口許を押さえている三橋。
「ごご、ごめっ…!」
「………。」
…そんなわけで、初めてのキスは苦い苦い鉄の味。
まともなキスができるようになったのは、それから更に一ヶ月後くらいだった気がする。
今でも決して巧いとは言えない。
それでも夜にはとろけるような激しいキスを、朝には触れるような優しいキスをくれる。
中でもオレは、まるでお喋りをしているような軽いキスが大好きだった。
頬に、額に、鼻先に、そして唇に。
羽根のような、軽いキス。
言葉なんかなくたって、口下手なお前の心全部伝わってくるんだ。
すき、だいすきって気持ち。
だからオレに、たくさんのキスを頂戴。
不器用な甘いキスを。
*END*
______20080311
あれ??何だかギャグみたいになってしまった;ヘタレ三橋です。キスキス連呼しすぎ…。
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