「……懐かしいな」 「懐かしいね」 「しかしよく覚えてるなフレン」 すっかり成長した少年達は、キッチンで三人分の食事を用意するあの頃の少女を見た。 Nameもすっかり成長し、ローウェル家の嫁となり、獣医という仕事をしている。 「もう泣かせたら承知しない」 「おーおー、騎士団長様は恐ろしいこと」 今日はフレンが夫婦の家に遊びに来ていて、料理をする彼女を見ていた二人がその背中を眺め、ふと昔の思い出を話していた。 もちろんそれはキッチンにいるNameには聞こえていない。 「あれから苦労したよな」 「そうだね、どんどん綺麗になっていくから」 「何人蹴落としたっけか」 「両手じゃ足りないと思う」 その事件からというもの、二人は少女を取り合い、彼女を想う者あらば二人で遠ざけるということを繰り返してきた。 仲がいいのか悪いのか、どちらかといえば"いい"んだろう。 そして見事勝ち取ったのはユーリだった。 いや、ユーリというより彼だろう。 「ラピードー!今日は肉と野菜どっちがいい?」 「ワンッ!」 「肉ね、わかった」 「ワフッ」 ラピードに話し掛けるNameは、普段の何倍も楽しそうだ。 「…ユーリが勝ったのってさ」 「今更言うな」 プロポーズの時ですらラピードの許可がいるという始末。彼女の動物好きは底なしらしい。 またそれを誇らしげに嫁の近くで寝そべる人間じみた犬を飼い主が羨まし気に見れば鼻で笑う。 「はーい、できたよ」 「お、オムライスか」 「相変わらずの腕前で」 「褒め言葉よね?」 「もちろん」 笑い合う親友と妻をじとりとみるユーリの視線に気付き、もう、とNameが苦笑した。 「みんななかよく食べるの」 そう言ってラピードのご飯もテーブルの下に置き、椅子に座って三人でいただきますの声を出した。 「Nameは変わってねーな」 「だね」 「?」 三人と一匹でご飯食べたい。 20100315編集 [*←][→#] [戻る] |