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プリンセスのロック
第1話





授業中。
先生の話のメモをノートの隅にとっている麻里加のことを見て頬が緩む。

―――私、麻里加のことが好きだ。

















「けーいちゃん!」


昼休み、麻里加がお弁当の包みを持って私の席の方にやってくる。もう季節外れな桜柄の包みをほどいて、中からやっぱり季節外れな、桜柄のお弁当箱を出す。

麻里加と出会ったのは去年。
中3のクラス替えで、私は仲が良い子と離れてしまった。そのクラスで初めて仲良くなった子が、東雲 麻里加。さらさらのロングヘアで、明るく、綺麗な顔をした彼女はきっと男子にも人気があるだろうと思った。意外にも麻里加には恋人がいたことないようだ。

ふたをまだ開けずに麻里加は待っていた。私と麻里加と、あと三人。大体その五人でお昼を食べることになっている。別のクラスからやってくる三人。
女の子が柏崎 千耶。
男の子が武島 龍也と、永瀬 徹。
永瀬 徹は気に入らない。絶対あいつは麻里加に気がある。麻里加はどうかはわからないけど、少なくとも恋愛的な意味で好きではない筈。私も通学鞄からお弁当箱を出して机に置いた。麻里加が机に肘をつく。

「千耶達、遅いね」

三人の代表格に千耶が出ると私は安心してしまう。徹達、と言ったらもうおしまいだ…。細かいことでも気になる自分を、自分で笑いそうになる。

「今日って、2組は英語だよね。高橋先生だから延びると思う」

私が言うと、麻里加は伸びをしながら答えた。

「そっかあ〜。で、また龍也は購買で買い弁なんだろうな。・・・先、食べちゃう?」

「そうしよっか。」

三人分の椅子だけキープしておいて、私達はお弁当箱を開ける。高1の春から私は麻里加と二人きりでお弁当を食べられていない。お昼の二人の時間は貴重なものだった。

しかしその時、私の大嫌いな永瀬が入ってきた。

「おじゃましまーす。麻里加、景ちゃん、お待たせ!」

教室に足を踏み入れる時、律義に挨拶して入ってくる。永瀬は私を除く、女子に結構人気がある。

「遅かったね」

にこやかに言う麻里加の隣の席に当たり前のように座る永瀬。私の身体が二つあったら良かったのに。そうしたら麻里加の両側塞げるのに。そう思うと箸を握る手に力がこもる。

「高橋サン長いからね。龍也はいつも通り購買で、千耶は髪を結び直してから来るって言ってた」

千耶は多分、永瀬が麻里加を好きだと知っていると思う。いつも麻里加の隣には座らない。麻里加の両隣は私と永瀬。まるでそう決まっているかのようだ。


千耶、龍也、徹の三人は高校からの入学だ。私と麻里加は、中学からずっとここ。
麻里加と私だけだったのは、中3の時だけ。
春から、そうじゃなくなった。



(110825)








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