00≫≫PARALLEL
学園メランコリア
〜achievement test〜
テスト終了。
生徒達は開放感にはしゃぎ、代わりに教師達は忙しさに追われる。
職員室では、生徒達から回収した答案用紙の山に一枚一枚赤ペンを走らせる教師達の姿があった。
勿論それはロックオンも例外ではなく、自分が担当するクラスの分だけとはいえ机の片隅の答案用紙は結構な高さに積まれている。
他の教科の担当教師も同じようにな状況だが、如何せん国語は他の教科と異なり問いによっては解答が複数あるので一々確認に時間が掛かる。
現にロックオンが一クラス分の採点を終わらせた頃には、理科のカタギリは一学年分の採点が終わったと言っていた。
明日は休日なので仕事を持ち帰る事も出来るが、ロックオンにはどうしても今日中に終わらせたい理由がある。
―――『じゃあ、テスト前だからしばらく二人で会えないが…勉強頑張れよ』
そう言ってティエリアの額に軽いキスを一つ送ったのはもう二週間近くも前。
余裕ぶって正論を翳してみたが、内心は穏やかじゃない。
ロックオンもまだ若い。
毎日顔を合わせているだけで満足は出来ない程度には。
そこへきてティエリアは聞き分けが良い子で、それっきりメール一つも無い。
こちらから連絡をしなくてはそのままになってしまうのではと思わず危惧してしまう程のあっさりとしたティエリアの態度に、それでも自分から言い出した事…と、何とか大人のプライドを保ってきた。
それもようやく今日で終わり。
だから何としても今日中にこの仕事を終えて、明日はティエリアと二人で過ごしたいのだ。
昼休みを返上し何とか用紙の山が半分程になった頃、見慣れた字がロックオンの目に飛び込んだ。
ティエリアの答案用紙だ。
その字を見るだけで思わず頬が緩む。
贔屓はいけないと思いながら、殊更丁寧に採点をしていく。
最初の選択問題、そして漢字の問題に順調に丸を打ち、読解問題に進む。
…と、ロックオンのペンが止まった。
―――っ、あの馬鹿…!
思わずペンを離し、口許を押さえてそこを凝視する。
「どうかしました?ストラトス先生?」
後ろを通り掛かったスメラギに覗き込まれ、慌てて左手を答案用紙の上に置いた。
「あ、いや…何でも…」
適当にごまかしてその場を凌ぐも、熱くなった頬はなかなか治まりを見せないでいた。
その問題はなんて事の無い、サービス問題として出題した簡単なもので、内容はこうだ。
『問:「もし〜なら」を使って短文を作りなさい。』
それに対してのティエリアの答えが、普段は飄々としたロックオンをこれ程までに動揺させた。
『答:もし会えなくて寂しいと感じているのが自分だけじゃないなら、明日会いに行っても良いですか。』
自分以外がこの答案用紙を見たらどうするんだ…。
珍しくティエリアに困らせられたロックオンは、苦笑を零してもう一度ペンを握る。
明日を二人で過ごす為に。
そしてテストの答案用紙がティエリアの手に返ってきた時、その問題の上の赤い丸がロックオンの動揺を表すように歪んでいるのを見て、ティエリアは満足そうに微笑むのだ。
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【achievement test】=【学力テスト】
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