00≫≫PARALLEL
学園メランコリア
〜Autumn has come.〜
秋というのは、とかく憂鬱になるものだ。
この祭の後の寂しさを感じる気候もそれを助長する。
―――とにかく、ティエリアは今、酷く憂鬱なのだ。
「ストラトス先生。来週の図書委員の当番、休ませて下さい」
職員室の窓から見える桜の木も徐々に青さを失っている。
不機嫌を露にしたティエリアが、図書委員の顧問であるロックオンに願い出るのには訳がある。
「ああ、そういえば体育祭の実行委員に立候補したんだってな?」
椅子を軋ませてティエリアに体を向けたロックオンは、僅かに口元を歪ませて見せた。
「………」
嫌そうな顔のティエリアにロックオンは続ける。
「お前のクラスの担任のスメラギ先生が泣いて喜んでたぞ。アーデが積極的に学校行事に参加するなんて!…ってな」
つまり、その体育祭の実行委員の仕事の為に図書委員の当番を休まざるを得ないのだ。
「別に…積極的に参加しようとした訳では…」
苦々しい表情で、ティエリアはポツリと漏らす。
「へぇ?」
やっぱりな。
ロックオンの予想通り、ティエリアは喜々としてそれに立候補した訳ではないらしい。
大体、ティエリアは運動が苦手なのだ。
体育祭なんて、嫌いなイベントの一つだろう。
ロックオンが視線で続きを促すと、ティエリアは少し躊躇いがちに話した。
「…実行委員になれば、競技には参加しなくても良いかもと思って…」
実際は、競技もしっかり参加しなくてはいけなくて、しかも実行委員になったせいでロックオンと一緒に居る事の出来る貴重な図書委員の時間まで割かれてしまう。
ティエリアの憂鬱の原因は、つまり浅はかな己の考えのせい。
ロックオンは呆れた様にため息を漏らす。
「考えが甘いんだよ、お前さんは」
返す言葉も無い。
ともすれば泣き出してしまいそうなティエリアに、ロックオンはこのくらいにしておくか、と組んだ長い足の爪先で、トン…と軽くティエリアの足を小突く。
「実行委員の顧問、俺なんだ」
「…え?」
俯いた顔を上げて眼鏡の奥で赤い目を丸くするティエリアに、ロックオンは器用にウインクした。
「よろしくな?」
「…はい」
一礼して職員室から出ていくティエリアは、入ってきた時とは違った晴れ晴れとした秋空の様に澄み渡っていた。
「…何とかと秋の空…ってな」
コロコロと変わる恋人のかわいらしい態度に、ロックオンは秋も満更じゃないな、と思った。
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【Autumn has come.】=【秋が来た】
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