00≫≫PARALLEL
mauvais ange 3
「アンジェ…か…」
シャワーを止めて、鏡の中の自分を見る。
肩に張り付く長い髪。
『ロックオン・ストラトス』となった彼に、あの時の『女』が自分である事を知られない様、常にこの長い髪を隠し、眼鏡を掛けていた。
今、鏡に映るこれが本来の自分の姿であるなら、僕はまんまと皆を騙し通している事になる。
最初は機密保持の為だった。
それがいつの間にか、普通の人間ではない自分を知られて嫌われてしまう事を怖れての行動に変わった。
とうとう、彼には最後まで嘘をつき通してしまった。
ニールはあの後、自分はもう少ししたら人を殺す事を生業にしなくてはならないと言った。
『本当は嫌だ』と呟いたのは、仮初めの天使への懺悔のつもりだったのかもしれない。
そして、朝日が昇る頃に僅かな金を僕から受け取って、振り向きもせず部屋から出ていった。
ニール…あの時、明日も君を救っていれば、君はガンダムマイスターにならずに済んだのだろうか。
………馬鹿な考え。
今となっては何もかもが遅過ぎるのだ。
鏡から視線を外し、僕の左手の薬指で光る指輪を目の前に翳した。
ロックオンから貰った物。
プレゼントされた時に直接指に嵌められて、そのままにしていたから気付かなかった。
指に馴染んで少し緩くなったそれを何気なく外して初めて知ったのだ。
【ange】
そう内側に彫られていた。
「偶然ですか?それとも…」
問い掛けても答えてはくれない指輪に、そっと唇を押し当てた。
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