OTHERS
predator
学園ヘヴン(丹羽×西園寺)
丹羽は私を大切に扱い過ぎる。
その無骨な手で壊れ物を扱う様に、そっと触れてくる。
それが不満だと感じるのは、我が儘だろうか。
私の部屋のカーテンとは違う、遮光性の低い青のカーテンが朝の光を柔らかく受け止め部屋の明度を上げる。
最初は無理矢理起こされる様で煩わしいと思っていたそれにも慣れた。
と同時に、日に焼けた逞しい背中が制服の白いシャツを羽織る様子を見上げるのにも慣れた。
「じゃあ、俺行くから」
『朝飯は食えよ』と、いかにも丹羽らしい事を言いながら、私の頭を撫でる手は酷く優しい。
それに慣れてしまいたくはないと思う。
私はその手を掴んで丹羽を引き止めた。
「どうした?郁ちゃん」
慣れてしまいたくはないのに、丹羽の瞳があまりにも優しく私を見詰めるから私は何も言えなくなる。
「………」
「郁ちゃん?」
丹羽は私の手をそのままに、私の顔を覗き込んだ。
やはりその表情はどこまでも優しくて、私は一度飲み込んだ言葉を吐き出した。
「…私は、お前に優しくされたい訳ではない」
ふと、丹羽の手が止まる。
そしてその優しかった手が乱暴に私の手首を掴んだかと思えば、ベッドの上の顔の横あたりに縫い留められた。
丹羽に拘束されているのだと脳が情報を処理した時には、今まさに肉食獣が獲物を捕食するような―――そんな丹羽の目に見下ろされていて、私は息を飲んだ。
ふ………と、丹羽の雰囲気が軽くなる。
「…っ、丹羽…!」
少し脅かされただけだと気付いて眉をひそめると、丹羽は困ったように微笑んだ。
「…あんま煽るなよ」
壊しちまうぞ、と耳に吹き込まれ、ぞわりと背筋に恐怖とも快感ともつかない何かが走る。
丹羽は意地悪に笑うと何事も無く私の上から身を離し、そして少し前と同じ顔をして部屋を出ていった。
丹羽は私を大切に扱い過ぎる。
それが不満だ。
だが、それは割と容易に崩す事が出来るのではないだろうか。
そう思うと、何故か私の心は躍った。
丹羽の匂いの残ったシーツに包まれながら、あの優しさを崩す算段を始めていた。
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久々の王郁です。
優しく優しくしたい王様と、物足りない女王様でした。
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