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00≫≫1st SEASON
月の姿



ティエリア・アーデの『アーデ』はドイツ語で『地球』という意味なのだと、それを教えてくれたのは誰だったか。

本人ではない事は確かだとか、そんなどうでもいい事を考えていた。

それはここが地上で、空を見上げれば月や星が瞬いている、俺には見慣れた景色だったからかもしれないし、隣にそのティエリア・アーデが居たからかもしれない。


『貴方は月のような人だ』


不意に隣の人がそう呟いた。

その時、俺はどんな顔でその言葉を聞いていたのだろう。




「月は形を変えるから不実の現れだと聞きました。だから、貴方は月のような人だ」

それがティエリアの俺に対する、最初で最後の最大限の嫌味だった。

「なるほどな」

ティエリア・アーデともあろう者がそんなナンセンスな事を言うのがあまりにも可笑しくて、口では肯定を示したが思わず鼻で笑ってしまった。

すると、ティエリアは僅かに傷付いたように顔を歪めて心の距離を見せる。

それを俺は体の距離で埋める。

乱暴に捕まえ、噛み付くように唇を合わせて、奪うように舌を絡めても、ティエリアはもう何も言わなかった。

最初で最後の最大限の嫌味だけを残して、後は傷付いた心ごと俺に全てを委ねる。


何が不実だ。

勝手に人を月に例えて、勝手に傷付いて―――…


ティエリア、お前はどうして光の部分だけを月と呼ぶんだ。

その闇の部分だって月である事に変わりはないのに。

月は決して形を変える事なくそこにある事を、お前は知らないままでいるのか?


俺はずっと、ティエリアの側に居るのに。

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