00≫≫1st SEASON Red/White 瞼の裏が燃える様に赤い。 暑くて、息苦しくて、いい加減起きたいのだが、その力すら奪われてジリジリと焼かれる。 RPGならマグマの中にいる感じ。 一歩毎にHPが削られていく。 今の俺は呼吸をする毎にHPが−1な真っ赤なステータス。 あー…そろそろ回復魔法をかけてくれ…。 ふと頬に感じる冷たい感触。 願いが通じたのか、白い魔法使いは癒しの手で俺を回復させてくれる。 「またこんな所で…」 呆れた様なティエリアの声が聞こえた。 何だか起きて会話を交わすのも面倒で寝たフリを続けていると、ティエリアの冷たい指先は俺の唇を辿った。 『あ、キスされる』と思った時には、指先よりも少し温かくて柔らかなそれが唇に触れた。 吐息が通り過ぎただけのような軽いキス。 まるで挨拶のようなそのキスに釣られて、思わず俺は目を開けてしまう。 間近に映ったティエリアの赤い目が、俺の空寝を見抜いていた。 「お目覚めはいかがですか?」 キスで起こされるなんて…ティエリアは魔法使いじゃなくて、アレだ。 「…眠りの森の美女の気分だな」 そう言うと、俺の王子様は不機嫌に眉を吊り上げて、俺から離れてしまった。 「馬鹿な事を言ってないで、シャワーでも浴びてきて下さい」 汗くさい、と冷たく言い放たれて、改めてその不快感に気付いた。 横になっていたソファーから体を起こし、じっとりと汗の染み込んだTシャツを脱ぎ捨てると『ここで脱ぐな』とでも言いたげなティエリアを無視して、Tシャツを掴んだままシャワーを浴びに部屋を横切る。 歩く速さで触れる空気がヒンヤリと汗ばんだ肌を冷やす。 部屋の扉に手を掛けると、本を片手に今まで俺が横になっていた白い皮張りのソファーに座ったティエリアが本から目を離さずに俺を呼び止めた。 「…それから…」 「ん?」 「僕は白雪姫をイメージしてました」 なるほど。 ティエリアの手にしている本には『Snow White』の文字。 でもあの状況なら白雪姫より眠りの森の美女だろう、と思ったが、やっぱり面倒になって曖昧に笑った。 [戻る] |