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00≫≫1st SEASON
DESIRE



地上でのミッションの為に滞在している王家の別荘に用意されたパーキング。
そこに運転する車を滑り込ませたのは、下弦の月が高く昇った深夜近く。

俺はゆっくりと車を止め、助手席に眠るティエリアに声を掛けた。

「…ティエリア、着いたぞ?」

「ん―――…」

ティエリアは僅かに身じろいだが、起きる様子が無い。

眼鏡を外した幼い寝顔に手を伸ばしてティエリアの頭を撫でると、乾ききらずに湿り気を帯びた髪が指に絡まる。

開いた襟元からは赤く鬱血した跡が覗いて、それがさっきまでの行為を思い起こさせ、罪悪感からか無理矢理起こす事を躊躇わせた。

潔く起こす事を諦めてもう暫く寝かせてやろうと手を退けた時、ふとティエリアの前のグローブボックスに目が行った。

ティエリアを起こさないように静かに開けて、小さなケースを取り出す。

握ったそれは、ビロードに包まれた指輪のケース。

中には未来の約束の為の指輪。

暫く指先でケースを弄り、溜め息と共にハンドルに乗せた腕の間に顔を臥せた。


…どうかしてる。

俺がこんな幸せを望むなんて。


渡したくても渡せないそれは、結局今では蓋を開ける事さえ出来ないでいる。

募るのは後悔ばかりだ。


…何に対して?


未来の約束なんて出来る筈の無い俺が、滑稽にも未来を願ってしまった事に?

それともティエリアを愛した事か?
仇を討つ為に生きる道を選んだ事か?


思えば全てが後悔に繋がるような、こんな生き方をしてしまった俺だけど。


それでも―――…


咎を受けるその時が、戦いが終わったよりも後なら、ほんの僅かの時間でも良い。

ティエリア―――お前と家族になりたいんだ。


叶わない願いだろうか。
赦されない想いだろうか。


「ティエリア…愛してる」

グローブボックスに指輪を隠し、眠るティエリアの左手を持ち上げそっとその薬指に口付けた。

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