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00≫≫1st SEASON
秘事は睫



ポロポロと綺麗なガラス玉のような涙を流しながら俺を頼るティエリアがいる。

あまりにも可愛く、奇跡に近いこの状況を出来ればずっと味わっていたいんだけど…。


「痛い…っ!」

「はいはい。もうちょい我慢しろな?」


…そういう訳にはいかない。

いつもは汗や埃から赤い瞳を守るはずのティエリアの長い睫毛。

その役目を終えた一本が、役目を終えても尚その赤い瞳に焦がれているのか、守るべき瞳を傷付けているのだ。


可哀相にティエリアは、急に襲ったチクチクとする痛みに耐えきれずに力任せに目を擦って、それでも取れないと俺に文字通り泣き付いてきた。

俺はといえば、あまりの可愛さに無条件で手助けしてやりたくなる気持ちを抑えて『目を擦ったら駄目だ』とお決まりの小言を一つ。

そして手袋を取って、まるでキスをするように上向かせたティエリアの吸い込まれそうな瞳を覗き込んでいる。

「うぅ………」

小さく唸りながら見開くティエリアの赤に、自分の碧のそれが映り込むのを少し気にしながら、下瞼の裏に張り付いた睫毛をそっと指先で取り除いた。

「…ほら、取れた」

どさくさに紛れて目尻にキスをしてやる。

ティエリアはそれ所では無いらしく、目をぱちぱちと瞬いてチクチクとした感覚が無いのを確認すると俺を見詰めた。

「…ありがとう、ございます…」

途端に色々な事が恥ずかしくなったのか、ティエリアは頬を真っ赤に染めた。

それが愛おしくて仕方がない。

「どういたしまして」

ティエリアをギュッと抱きしめながら、俺は指先に乗ったままの廃除された長い一本の睫毛を見る。



いつか、俺も守るべきものを愛するが故に傷付けて離れていくのだろうか?


この睫毛のように。


指から落ちていく睫毛に、俺は最期の自分を見た気がした―――…

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