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00≫≫1st SEASON
The Sleeping Beauty



宇宙の片隅に漂うその機体。
最早鉄屑と化したそれは音も無く静かに回収された。



中で眠る綺麗な人は、もう虫の息で…ただ、その美しい顔が傷ついていなくて良かったな、と思う。

内臓を酷く損傷していたが、他に外傷は無く治療は至って迅速に行われ、近く目を醒ますだろうと判断された。

救命用ポッドに入れられたその傍らに、ほんの少し前まで同じような状態で宇宙をその身一つで漂っていた男が寄り添っていた。

意識を取り戻したばかりの彼が、その機体を見つけたのだ。

君も休んでいなくてはいけないよ、と声を掛けたが、彼は『こいつが目覚めた時に側に居てやりたいんだ』と、そこから動こうとはしなかった。

―――恋人かい?

あまりにも健気なその行動に思わずそう聞けば、彼は残された左目を丸くして次の瞬間困った様に笑った。

「そんなんじゃないさ」

否定はしたが、そうは見えなかったから本当か?とからかえば、彼は気を悪くした風でも無く『恋人じゃ無いが、大切な人だ』と教えてくれた。
それから彼は―――暇を持て余していたのだろうか?―――この眠っている綺麗な人がどんな人かを話してくれた。

とても厳しく、それでいて泣き虫で、強そうに振る舞っていても実は脆い………自分の事は一切話そうとしない彼だったが、本当に嬉しそうに語った。
生きていてくれて嬉しかったのだと、泣きそうな顔で言った。



眠る人が乗っていた機体は見た事の無い型ではあったが、ガンダムに間違いなかった。
それだけで彼等が何者であったのかは推し量る事が出来たが、我々はそれを言及する事をしなかった。

ただ今は、傍らに寄り添った彼の祈る様に折られた指に、早く目覚めてくれと願いを添えるだけだと、我々は考えた。

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