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00≫≫1st SEASON
DOUBLE!



珍しくマイスター四人で地上に降りている。

もちろんミッションで。

そうじゃなければ俺達の視線を一人占めにしている地上嫌いの美人…ティエリアがここにいる筈が無い。


―――さて、今言った通り俺と刹那、そしてアレルヤの視線はティエリアに注がれている。


ミッションは、まあ追い追い頑張るとして…今の俺達はミッションとは関係なく非常に緊迫した状態だ。

俺達の目の前にホテルの部屋のカードキーが二枚。

ついでに言えばこの部屋、手違いでどちらもダブル。
部屋の広さの関係でエクストラベッドも入れられないと言う。

そんな最悪な状況の中、俺と刹那、そしてアレルヤは揃ってティエリアと同室になる事を望んでいるのだ。

誰だってむさ苦しい野郎と同じベッドで眠るなんて御免だ。
同じ条件なら美人が隣に寝ていた方が良いに決まってる。


「なぁ刹那。お前は体が小さいんだから一番体の大きいアレルヤと同室になるべきなんじゃないか?」

「嫌だ」

「そうだよ。だいたいロックオンと僕の体格差なんて殆ど無いじゃないですか」


こうして誰一人としてティエリアとの同室の権利を譲らず、俺達は部屋に入る事も出来ずにこうしてホテルのロビーでカードキーを前に唸り合っている訳だが…。

「ティエリアは誰が同室が良いんだい?」

ああ…アレルヤ、お前って奴は…。

余程選ばれる自信があるのか単なる天然か(恐らく後者だろう)、わざわざティエリアに選ばせるなんて…はっきり言って選ばれなかったら俺はヘコむぞ。

「俺は…」

ティエリアが形の良い唇を動かすのを俺達は固唾を飲んで見守る。

ティエリアの口がゆっくり開き、言葉を紡ごうとしたその時。
ティエリアの凜と澄んだ声は響かず、代わりに聞こえたのは意外な、だが良く馴染んだ声だった。

「…兄さん?」

恐る恐るその声の方向へ振り返る。

幻聴である事を祈りながら。

「…ライ、ル…?」

突然現れた俺と同じ容姿をした男に、目の前のティエリアは開いた口をそのままに、無防備な可愛い顔を晒してる。

あからさまに驚愕の表情を見せる仲間達と、もう二度と会うまいと心に決めていた筈の弟との間で俺は頭を抱えた。




「…ふーん、仕事仲間ね…」

ライルは疑う眼差しでぐるりと三人の顔を見回し、最後に俺を見た。

「嘘はついてないぜ」

解るだろ?と言えば、ライルはしばらく俺の目を見て、そして俺の言葉が嘘ではないと判断した。

「その仕事って?」

「言う気はない」

ライルの問いに俺が短くそう答えると、ライルはそれ以上を聞く事を諦めた。

「…オーケイ。それで、おたくらは部屋で揉めていると…?」

この中で一番人が良さそうなアレルヤにライルは聞いた。

「あ…はい!」

思わず答えるアレルヤに、ティエリアは『余計な事は言うな』とばかりに不機嫌な視線を投げる。

頼むよ。
この美人の沸点は低いんだ。
これ以上問題を―――…

「なら、美人さん。あんた俺の部屋に来ない?」

ライルがティエリアの肩にスルリと腕を回した。

「なっ?!」

普段のティエリアを知る俺達は、あまりの出来事に固まるしかなかった。

「俺の部屋、最上階の…とはいかないがスイートだし」

「ちょ、ちょっと待てよ!」

俺の制止を無視して、ライルはティエリアの耳元で何かを囁く。

「………………」

元々不機嫌だった表情がみるみる険悪なものとなり、そして心底不愉快そうにティエリアはライルを振り払い立ち上がった。

「…失礼する」

ライルが何を言ったのかは解らないが、ティエリアを怒らせた事だけはこの場の全員が理解出来た。

ズカズカと大股でロビーを後にするティエリアをアレルヤが刹那を引っ張りながら追い掛ける。

「可愛いな。アレ」

質の悪い笑みを浮かべるライルに呆れながら、俺はティエリア達を追った。




「あの…ティエリア?」

俺が声を掛けると、ティエリアは怒りに赤く染めた顔で俺を睨んだ。

「貴方の顔を見ていると不愉快だ!アレルヤ・ハプティズムと仲良く寝てろ!!」

カードキーを一枚奪ったティエリアは刹那を引っ張り込むように部屋に入り、その扉を無情にも固く閉ざした。

「そ、そんな…」

俺が何か言った訳じゃないのに…!

大体ティエリアに何を言いやがったんだ、あいつは?!

「あの…ドンマイ」

アレルヤの慰めが、更に俺を落ち込ませた。




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