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00≫≫1st SEASON
雪どけ



『直ッタ!直ッタ!』

けたたましい電子音を響かせて、ハロが扉を開けて飛び込んでくる。

ティエリアに半分を占拠されたベッドから上半身を起こすと、まるで『褒めて、褒めて』というように部屋中をハロは跳ね回る。


さっきのティエリアといい…こいつらは俺の部屋の鍵を何だと思ってるんだ。


俯せで毛布に包まり眠るティエリアにぶつかる寸前、俺はハロを捕まえる。

『直ッタ!直ッタ!』

パタパタとご機嫌に耳を動かすハロに、俺は笑顔を作った。

「良くやった。ご苦労さんだな、ハロ。フェルトには報告したか?」

『フェルト、マダ!フェルト、マダ!』

「じゃあ、報告してやんなきゃな?」

『了解!了解!』

ハロは嬉しそうに目をチカチカさせると、俺の手から抜け出して跳ねながら部屋から出ていった。

ほっとして溜め息を一つ零すと、のそり…と隣のティエリアが体を起こす。

「…呆れた」

…何だ。起きてたのか。

「何が」

「AIまで言いくるめるなんて…随分と口が上手くていらっしゃる」

乱れた髪を掻き上げる仕種は本当にセクシー。

…言葉は辛辣だがな。

「人聞きが悪いな。お前さんとの甘い時間を優先したまでだ」

言いながらティエリアの背中にキスを贈ると、柳のようなしなやかな腕で振り払われた。

「もう寒く無いでしょう?」

しれっと言うティエリアに俺は顔を引き攣らせる。

「…マジ?」

何てドライなんだ。

さっきまであんなに激しく求め合ったってのに、ティエリアはそんな雰囲気を微塵も見せずに落ちた服を拾い上げていく。

これには俺も呆れるしかない。

「お前さん、本当に寒かったから来ただけとか言わないよな?」

そう言うと、シャツのボタンを留めるティエリアは心外だと目を丸くした。

「そんな事…貴方が寂しがってると思ったから来てあげたんです」

『来てあげた』…ね。

「…さいですか」

ちょっとでも甘い言葉を期待した俺が馬鹿だったのか…。

枕に突っ伏すと、ふふっと笑う綺麗な声が頭の上から降ってきた。

「…冗談だ。貴方が居なくて僕が寂しかったから来たんです」

今更…。

「………」

すっかり拗ねた俺が視線だけをティエリアに投げると、身なりを整えたティエリアは俺が横になるベッドの縁に腰掛けた。

「うたぐり深いですね」

「…証拠は?」

ティエリアは『困った人だ』と笑って、触れるだけのキスをくれた。

その温かさに、積もる雪が溶けていく。


溶けた後に残ったのは、純粋な愛しさ。




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あきゅろす。
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