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00≫≫1st SEASON
one-sided love 2
(ロク→←ティエ←アレ)



酒を持ってアレルヤの部屋に押しかけた時には、既にほろ酔いだった俺。

『怪我人が何をやってるんですか』と咎めるアレルヤを無視して無理矢理付き合わせ、勢いに任せてティエリアに告白された事や振った事をべらべら喋った。

口の軽い男だ、と我ながら思う。

アレルヤはそれを時折相槌を交えながら静かに聞き、俺が注いだ酒を煽った。

「僕がティエリアを庇ったら、ティエリアは僕を好きになってくれてたのかな…」

「………」

空になったグラスに酒を満たしながら、俺はアレルヤの呟いた言葉を黙って聞いていた。

ティエリアは良くも悪くも流され易い。
なら、俺じゃなくても良かったのかも知れない。
アレルヤでも刹那でも、ヴェーダに代わる者なら誰でも…。

「…でも、動けなかったんですよ…キュリオスなら、あの距離でも間に合ったのに」

「やめとけ。お前さんがやったら死んでたよ」

ハロを積んでいるデュナメスだからこそ、ハロの制御によって致命傷を受けずに済んだのだ。
ハロが居なかったら間違いなく死んでいた。

だからアレルヤは動けなかったのかもしれない。

アレルヤは自己防衛本能が強い…本人がそれを望んでいるかは別にして。

「ロックオンは、別にそれを見越して動いた訳じゃ無いでしょう?」

「まぁ、な」

自分が死ぬかどうか何て考えもしなかった。
ただ、動かないティエリアを守ろうと、それだけで。

「悔しいな…」

俯いたアレルヤの表情は解らなかった。

アレルヤがティエリアを特別な想いで見ていた事を俺は知っていた。

…知りながら、アレルヤの優しさに甘えてる俺は、何て残酷なんだろう。

「…悪いな」

「何ですか?…嫌味ですか?」

「………ああ、嫌味だ」

酷いなぁ、とアレルヤは情けなく眉を下げて笑った。


アレルヤはティエリアが好きで、ティエリアは俺を選んで、俺はティエリアを拒絶した。
小説にもならない様な安っぽい恋愛模様。

戦争根絶とかデカイ事を掲げながら、何やってんだろうな…俺達。


しばらく、沈黙が続いた。

グラスの中の酒の量だけが、減っては増えてを繰り返す。

「死ぬんですか?」

沈黙を引き裂いたアレルヤの声は、少し酒に酔っている様だった。

「死なねぇよ」

「嘘だ、死ぬんだ」

「アレルヤ、お前なぁ…」

飲み過ぎだ。
アレルヤの前にあるグラスを取り上げようと手を伸ばすと、その手首をアレルヤに掴まれた。

咄嗟に引こうとするが、びくともしない。

「ロックオンもティエリアの事、好きなくせに…!」

乱れた長い前髪の隙間からいつもは隠れている金色の目が覗き、アレルヤはその両目で真っ直ぐに俺を睨んだ。

俺の手首を握る手は、微かに震えていた。

溜め息をついて、握られていない方の手でアレルヤの頭を撫でてやる。

「…お前、何そんなに怒ってんだよ?」

するとアレルヤは掴んでいた手を離し、テーブルに突っ伏せて両腕で顔を覆った。

「…っ、わからないよ…!」

アレルヤが鼻を啜る音が聞こえて、とうとう頭を撫でる手を離せなくなった。


…ったく…アレルヤに酒なんか飲ませるんじゃなかった。


アレルヤの頭を撫でたまま、俺は諭す様に言った。

「なぁ、アレルヤ…俺は別に死にに行くつもりは無いんだ。死ぬからなんて、そんな理由でティエリアを拒絶した訳じゃない」

一度言葉を切って、気持ちを整える。

―――解ってる。
利き目を失って勝てるような戦いじゃない事くらい。
だけど、俺は絶望して行く訳じゃない。

「終わらせなきゃならない事がある。それが終わらないと、俺は前に進めないんだ」


初めて、俺の体に染み付いた復讐を終わらせたいと思った。
ティエリアに好きだと言われて、初めて共に生きる道を選びたいと願った。

俺自身が進む為に、今はティエリアを受け入れられない。


…そこまで話すと、アレルヤは落ち着いたのか、鳴咽混じりに呟いた。

「そっかぁ…やっぱ、ロックオンには………敵わない、や―――…」

そして、糸が切れた様に眠りに落ちた。


敵わないのは俺の方だ。
ティエリアが選んだのがお前なら…なんて、思わず想像して嫉妬してしまう程に。


そっとアレルヤの頭から手を離し、俺はグラスに残る酒を口に運んだ。


なぁ、ティエリア。
片が付いたら、今度は俺から告白するから。
だから、アレルヤに乗り換えたりしないでくれよ?

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