BASARA≫≫SHORTSHORT
Subconscious Desire
『寒いから』
―――今宵はそれを言い訳にして………。
今夜はやけに冷え込む。
明日辺りは雪でも降るかもしれない。
筆を持つ手がすっかり冷えてしまっているのに気付き、小十郎は少し早目に床に着く事にした。
滑り込んだ布団は思いの外冷たく、思わず体を緊張させた。
暫くして冷えた布団が己の体温で暖まり、緊張した体がようやく弛緩する頃にそれを見計らった様にそろりと襖が開いた。
「小十郎」
冷気と共に顔を覗かせた人物を見遣り、小十郎は起き上がり姿勢を正す。
「政宗様…どうされました?」
「寒い」
政宗はぽつりと言うと、まるで当然とばかりにするりと小十郎の横に滑り込む。
「…政宗様、ご自分の部屋でお休み下さい」
「No.寒い」
布団の中で丸くなり、暖かくなった布団を堪能している様子の政宗に、小十郎はため息を一つ零した。
「…ではそこでお休み下さい。俺は別の部屋で…」
言いながら立ち上がろうとした小十郎の着物を、政宗は掴んだ。
「意味ねぇだろうが」
見上げる猫の様な目に、小十郎は眉を寄せた。
「…政宗様、小十郎を困らせますな」
「何を困る事がある」
「俺も男ですよ」
「なら………襲うか?」
政宗は着物の合わせを緩め、その豊満な膨らみを小十郎に晒し挑発的に笑って見せる。
「………その様に男を誘う様な真似、教えた覚えはありませんぞ」
「女の本能だろ?」
小十郎は微かに喉を鳴らし、そっと手をその無骨な手を伸ばした。
「…出来ないのを知っているくせに…酷い人だ」
伸ばされた小十郎の手は政宗の肌には触れず、緩められた着物を元に戻しただけだった。
「酷いのはどっちだよ」
望んでいるのを知っているくせに…。
「さあ、ご自分の部屋にお戻り下さい」
知らぬ顔でそう言い放つ小十郎に、政宗はフン…と鼻を鳴らした。
「No way!オレはここで寝る」
言い出したら聞かない政宗。
結局、最後は決まって小十郎が折れるのだ。
「全く…困ったお姫様だ」
『お姫様』と呼ばれ、政宗は唇の端を微かに上げた。
まだ、小十郎は自分を女として見ている。
ならば、いつか『間違い』が起こるかもしれない。
………そんな無駄かもしれない希望が、まだ持てる。
「………小十郎、寝たのか?」
「………」
狸寝入り。
政宗はそれに気付かない振りをして、そっと小十郎に口付ける。
小十郎は、口付けに気付かない振りで政宗の唇を受け止めた。
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