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BASARA≫≫SHORTSHORT
恋知り



恋を語るその男は言った。


アンタ達のそれはまるで恋みたいだ―――と。


その時は『馬鹿馬鹿しい!』と一笑に付したが、その言葉を考える暇が出来た。


とにかく嫌いだ。

奴さんも俺の事なんざ大っ嫌いだろう。

それだけは揺るぎの無い事実だが、果たしてそこまで嫌いになる要因はあっただろうか。

さて、これは困った。

俺は奴を嫌いになった理由を見付けられない。

嫌いだ、嫌いだとただ理由もなく闇雲に思う気持ちは、成る程…恋に似ているのかもしれない。




「―――考え事か」

仰向けに倒れた俺の喉に輪刀の刃を当てながら、そいつは低く呟くように言った。

俺は毛利との戦に負け、不様に倒れている。
今はもう、指一本動かせそうにねぇ。

毛利がその手を離せば、その輪刀の重みでこの首は体から離れるだろう。

そんな緊迫した状況も忘れ、他に考える事もないのをこれ幸いと俺は物思いに耽っていたようだ。

真上には毛利の顔があって、その向こうのお天道さんが輝く空はやたらと青く綺麗だ。

毛利と空を同時に右目に映しながら、日輪を信仰している割にはつくづく日の光が似合わない奴だと思った。

「…あんたと俺は、まるで恋をしてるみたいだと言った奴が居てなぁ…そいつを思い出していた」

そのまま輪刀が下ろされないのを毛利が話しを聞く気があると勝手に判断した俺は、やはり勝手に話しを続けた。

「毛利…あんた、俺が嫌いかい?」

「嫌いだ」

「俺もあんたが嫌いだ」

即答した毛利に畳み掛けるように言えば、毛利は不快に眉をひそめる。

唇の端を僅かに上げ、『まぁ、聞けよ』と俺は物思いの中で浮かんだ疑問を毛利に投げ掛けた。

「…だが、その理由が見付からねぇ」

逆光の中、毛利の不快に歪んだままの眉根がピクリと震えるのが見え、僅かに唾液を飲んだ。

「…なあ、毛利―――…」

言いかけたその時、激しい音と共に爆風が毛利の輪刀を吹き飛ばした。

『アニキ!!』という部下達の声に視線を遣れば、土煙に重機の重い影が浮かんでいる。

本当に良く出来た部下共だ。
いつでも俺の期待を裏切らない。

…今日ばかりは、少し頃合いを間違えたようだが。

そう口の端だけで笑い、不意を付かれて動けずにいる毛利を見上げながら、輪刀の束縛から逃れた体を起こす。


ああ、動けるな。


そう思った瞬間、俺の手は傍らの碇槍に伸びていた。

「…っ?!き、さま…っ、我を謀ったか…!」

毛利の目の前で碇槍を操り重機に飛び乗った俺に、毛利はまるで俺を信頼していたような言い草で憤慨した。

「悪いな、毛利。コイツはちぃとばかし起動に時間が掛かるもんでよ。あんたが話しに乗ってくれて助かったぜ。お陰でこっちも動けるまでに回復したしな」

毛利の輪刀は向こうで転がっている。
例え運良く手に戻したとしても、刃は欠けて使い物にならないだろう。

このまま毛利を仕留めるのは簡単かもしれなかったが、俺はそのまま撤退を命じた。

「そういう所だ…!我は…我は貴様のそういう所が嫌いだ!!」

残された毛利の顔は悔しさで歪み、氷の面なんて微塵も感じられない。


その顔は俺だけに向けられる顔だと自惚れても良いのかい?


「そうかい。俺はあんたのそういう所―――…」

言葉の最後は轟音に掻き消された。

だが構わない。

俺達の関係がその一言で変わる訳でもないのだから。



恋をするように、殺し合おう。

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あきゅろす。
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