Novel 勇♀×ピサロ中心
夕華
そう言いながら、はい、と私のベッドサイドのテーブルに膳ごと置きつつ、マーニャは私を見ながら、ドアの方を顎で指す。
するとそこには、あいつが立っていた。
「行くよ」
マントを引っ張るようにして無理矢理椅子から立たされたアリーナは、何か言いたげにマーニャを見たけど、そこにあいつがいたからだろう、急に下を向いて足早にそそくさと部屋を出て行った。
「あんたが助けた癖に、来る事はないだろうに。」
マーニャの捨て台詞を聞きながら、あたしは、ふ、と笑った。
「……入ったら」
あたしは戸口へと言う。
「………」
長身だからか、頭をかるく避けるようにかがめながらピサロは入ってきて、窮屈な椅子に腰かけた。
「…… 助けてくれた事は感謝する……けど、あたしあんたには頭は下げないよ」
どんなに嫌いな相手でも、きちんと目を合わせて話なさいーー。父さんのいいつけ通り、あたしは言った。
「礼を言われておるのか、責められているのか、わからぬ」
椅子に片肘をつきながら言うピサロは凄くふてぶてしい。
ー…一体…。
「何しに来たんであろうな」
言ってから横を向いて息を吐き出すピサロの横顔は、西日も差し込んでか、銀の髪もきらきら光って揺れた。
だから妖魔なんて言われてるの、かな。
「何しに来たのよ
…調子、狂う」
あいつのもの言いがあんまりおかしくて、でも真剣で。
こみたげた笑いをこらえようと、あたしは下を向かざるを得ない。
「…私もだ」
ふ、と顔を上げると、あいつの気配はもうなく、オレンジ色になって半分とけた夕日だけが、あたしを照らして、いた。
[*前へ][次へ#]
無料HPエムペ!