誕生
ロザリーは膝をつき、天を見上げ呟いた。呟いたに留めたのは、護衛、階下の者に聞かれないためだった。
「…世を統べるマスタードラゴンよ、私の呼びかけにお答え下さいーー…」
エルフの祈りは特殊なもの。聖なる声はたとえ密やかなものであっても、確実に当の主に届く。相手が応えられる状況にいるならばーだが。
「(そなたは誰ぞ)」
太く、大きな声でありながら、ロザリーの耳元にだけ、その反響は返ってきた。思わず身震いするほどの人外さを持ち、威厳と、優雅さを持つその声は、確かにマスタードラゴンだと、ロザリーは確信した。
「私は、今は亡きエルフの國の姫、ロザリーです」
「(…そなたが魔王に匿われていたのは知っていた)」
「……はい。私がマスタードラゴンさまを知ったのもつい数日前なのです。…文献で知りました。」
それは本当だった。黄金の腕輪の存在を知った時、同時にマスタードラゴンについての事も初めて知ったのだった。
そして、ピサロの本当の狙いをも。
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