[携帯モード] [URL送信]
誕生


ロザリーは膝をつき、天を見上げ呟いた。呟いたに留めたのは、護衛、階下の者に聞かれないためだった。


「…世を統べるマスタードラゴンよ、私の呼びかけにお答え下さいーー…」



エルフの祈りは特殊なもの。聖なる声はたとえ密やかなものであっても、確実に当の主に届く。相手が応えられる状況にいるならばーだが。


「(そなたは誰ぞ)」

太く、大きな声でありながら、ロザリーの耳元にだけ、その反響は返ってきた。思わず身震いするほどの人外さを持ち、威厳と、優雅さを持つその声は、確かにマスタードラゴンだと、ロザリーは確信した。


「私は、今は亡きエルフの國の姫、ロザリーです」


「(…そなたが魔王に匿われていたのは知っていた)」


「……はい。私がマスタードラゴンさまを知ったのもつい数日前なのです。…文献で知りました。」

それは本当だった。黄金の腕輪の存在を知った時、同時にマスタードラゴンについての事も初めて知ったのだった。
そして、ピサロの本当の狙いをも。




[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!