対なるもの 黄金の腕輪は、毒々しく、妖しく、所持した途端に、理性を失い、混乱するという。 元より魔に染まった者には、その影響は受けない。 最も、理性がある強い意志がある者だけなのだが。 ーーそんな恐ろしいもの。 1階の教会からは高く離れているが、特有の耳は、人の何倍も聴こえる故、教会での会話などは筒抜けに近い。 そしてそれをいま階下で話しているのを、エルフの姫は暗に聞いてしまったのだった。 普段はあまり戦に参加しない魔物も周知しているという事は、随分前の事で、それもかなり広まっているのだろう。 ピサロが最近、更に沙汰になっていた事にも合点がいく。 遂に恐れていた事が事実になってしまった。 この塔に頻繁に通っていた頃、彼は焦っているようなものをロザリーは密かに感じていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |