塔 この一室には二人きりだという事にふと気づく。 先ほどまでの住処でも二人きりの時がいくらもあったというのに。 狭い密室のようだからなのか。 ピサロの視線を避けて、ロザリーは、窓の外を眺める振りをして背を向けた。 「高い故、目下を眺めるのは困難だが、森も茂っておる。鷹などは来るやも知れぬな」 「ええ……」 「では、私は行く。 良い子にしているのだぞ、ロザリー」 「あ………」 颯爽ときびすを返すピサロに、戸惑いがちに呼びかけだが、聞こえたか聞こえずか、ピサロは扉の外へ歩み去った。 「………」 [*前へ][次へ#] [戻る] |