廃墟 「いずれ、連れて参ろうと思っていたのだがー。」 言葉を切る。 それ以上は、言わずとも分かる事で。 「お父様…」 そこには、何の迷いもなく、真摯に事実を受け止めた、決意の表情があった。 表面から受け止める頑強さを彼女は持っていたのである。それは紛れもなく、エルフの國の血筋を色濃く表す、一つの証明でもあった。 ー違いないーー… 改めて、ピサロはそれを満足気に見て取った。 妖魔の目敏い確信に気づかず、ロザリーは、ピサロを感謝の眼差しで見詰めた。 「わたしは、あなたに、命と、命の心を救って頂きました。 私は何も持っていません。私があなたにできる事はありません。どうぞこのままお捨て置き下さい。」 そういい、また粗末な墓石に向き直った。 「そなたは、私の助力を無碍にするつもりなのか?」 「そんな事は…。でも私は…。あなたにとって何の得にもならないのでは」 寧ろ、足手まといになる危惧感はある。 魔の拠点にこの身を置いて、足枷にならぬ訳はない。また、自身の身の保障もない。 「申したであろう。そなたは、あの時から私のものだ。そなたはその身を護る術はなかろうに」 その通りだった。 だが、恩を反故にする訳にはいかないと思うのに。 それに…命を助けられたとはいえ、当事者ではないとはいえ、仇でもあるから。 [*前へ][次へ#] [戻る] |