焦がす先
――――ああ。
初めて知る。このひとの胸の内を。
「そなたは向後、私の妻になる。 そのような事には気にかけずとも良いのだ
私の…私の事だけ考えていればそれで良いのだ」
初めて見るその憂いに満ちた目で、
強い力で、
妖艶な声で…
そう諭されると…、
言いようのない不安と、支配される事の歓びとが入り混じり、私は恍惚とも呼べる新たな感情に支配されて、眼を開く事しかできない。
自分の行為が否定されたというのに。
自分の意図に反する指図を、命令をされたというのに…
躰は途端に震え出し、何も考えられなくなる。
このままでは、このままでは、この人を止めなくてはいけない私が、支配されてしまう……
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