焦がす先
魔王が入ってきたのも気づかずに、窓辺で一心に祈り続ける一人の娘。
「無駄だと申したであろうに。」
彼は特勝な面差しで、まっすぐに見つめてくる。
私はそれを見ないように目を伏せた。
このひとには私の言う事が解らない…。解ろうとしないのだろう。
私達は進む路が違うから。
寧ろ解ってはいけないのだ。
けれど今は違った。
「ピサロ様…」
「?」
「私は祈っていました。
それは、それは私の…、いえ、 亡くなった人々に祈りを捧げていたのです。」
―――伝わって。
そう告げた途端、彼の紅い瞳が、一瞬揺れた……ように見えた。
「何故?」
「……な…ぜ…?」
私は彼が口にした言葉の意味が判らず、同じ言葉を口にした。
「死は無ではないのか」
ぽつりと呟く。
私は動揺を隠せずに、いささか困惑する。
「 そう…でしょうか。そうなのかも知れません。私には判りませぬ。 でも」
急に抱きすくめられ、だが、言葉を繋げる。
「でも、もし無であったとしても、祈らずにはいられないのです。
それが慰めに、なる、から…………っ!!」
急にその力が強くなり、私は堅く震えてしまう。
「ピサロ…さま?」
「そのような者になぜ…」
「えっ………」
「無になったものに、そなたが気にかける必要はないであろうに」
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