願い
いかめしい顔を綻ばせ、答える。
「しかも、毎晩」
「毎晩?!」
場が一斉にざわめきに満ち、ライノソルジャーは慌てて、声を張り上げ、言葉を続けた。
「ああ、毎晩さ。毎晩、あの塔の窓から、ほんの少しの間だが、お姿が見れるのだ」
意気揚々として、ライノソルジャーは言った。
皆から濯がれた視線が、驚きから、嫉妬に変化したのも気づかずに。
「お〜ま〜え〜!!」
皆が一斉に言い、ライノソルジャーに詰め寄った。
「何で隠してたんだ!」
「独り占めする気かっ!!」
とっかえひっかえに首根っこを掴まれ、とうとうその大きな図体が真っ直ぐに倒れ、起き上がれぬよう、数匹でのし掛かった後、ライノソルジャーは、うぐぐと呻きながら、
「いや寧ろ独り占めしてるのはピサロ様じゃ…」
と、苦しまぎれに言ったのだった。
皆が、そういえばそうだなぁと、納得しかけた時、シスターは、こほん、と、一つせき払いをし、
「あなた達、ここは神聖なる教会ですよ…」
と、ひとつ溜め息をついて、
「……それで。
どんな方だったのかしら…?」
注意が質問に替わった瞬間でもあった…。
ライノソルジャーは得意気に、
「天女のようなお方でしたです。おれは天女なんて見た事も、見たくもないんですが、もしいるんだとすれば、ああいうおなごの事を云うのかなあなどと思います。 」
「ほう。して、どんな風貌だったのですか?」
「はい。髪は長く蜂蜜の色をしていました。瞳は、ホビットの取ってくるような、エメなんとかっちゅー、色に似てるように見えました。
遠目でしたが、きらきら光っていたのでわかったですだ。」「んで、わしの姿を見つけると、ちょっぴり笑ったように見えました。」
「それから?」
「は……。それからは、わしは毎晩お姿を見に行くようになったんでごぜえます」
「なるほど…。姿をお見せになられるのは、いつ、どのくらいの間なのです?」
「は……。 子の刻、九ッ半丁度で……ぼうとしていましたので、ちゃんとはわかりはしねえですが、あまり長い時間ではないかと」
「そうですか……。」
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