かみなりと約束
その瞳を直視するのは、いくら美しいものを好む彼にとっても困難な事であり。
純粋無垢な、真摯なその瞳は、魔王をも、狂わせる。
それが、彼女にとって故意だという事を、彼は気づかぬ振りをしているのにも関わらず。
「あ…震えが止まりましたわ」
狂おしい、彼の思考など、露ほどにも知らず、ひとりごちるように呟く、腕の中にいる、愛する娘。
「でも……… あなたが毎日来て下さるのなら、毎日が雷でも構いませんわ。」
唄うように、言った後、再びその胸の中に顔を埋める。 どんなに恐ろしいものでも、それを容易く、善い方にしてしまうのは、このかよわき娘のどこにあるというのか。
妖魔の皇子は、ほんの刹那、迷う振りをした後、告げた。
「承知した。このような時は、必ずや、そなたの元に参ろう」
彼自身が、一緒にいてやれぬ、彼女を護る事のできぬせめてもの詫びに、交わした、ただ一つの約束………
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