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その武器の名は…(シリアス?/小十佐)
「……何の用だ、武田の忍」
「あら、気付いてた?」

 小十郎が目だけを動かして背後に気を向けると、背後から己の首に鋭利な手裏剣をヒタリとつけている佐助の姿があった。
 うっすら笑んではいるが、それに反する静かで深い殺気がその体驅を覆っている。

 小十郎は今し方畑から収穫したばかりのネギを抱えたまま動かない。だが、決して佐助の殺気に圧されたわけではない。そして佐助もピクリとも動かなかった。


 互いに計っているのだ。
 不意を突く、その一瞬を。


 木の枝にとまる鳥がばさりと飛び立った。ひらりひらりと舞う羽と葉をぼんやりと見つめながら、小十郎はどこか他人事のように問掛けた。

「何故俺を狙う、忍。武田の敵なんざまだまだ…織田も豊臣も居るだろうが」
「まぁ、そうなんだけどね…」

 クッと、手裏剣の刃を首に押し当てられる。
 極限まで研がれた手裏剣は躊躇う事なく皮膚に食い込み、紅を滲ませる。

「織田より豊臣よりそれこそ竜の旦那より…アンタは邪魔なんだよ。武田にとっても、ウチの旦那にとっても……それに、俺様にとっても」
「そうか」
「だから死んでくれない?竜の旦那には手、出さないであげるから」

 しばらく間を置いてから小十郎はまたそうかと続けた。…のもつかの間。一瞬の内に佐助の手裏剣を弾き飛ばしその間合いの外に飛び出していた。

「くッ…!」

 どうして!
 右目の旦那は武器を持っていない筈なのに…!

 タァンと太い枝へと跳んだ佐助が見たのは、こちらを鋭く睨んでいる小十郎の姿。





 その手が握っているのは、ネギ。










「…はァ!?ちょ、ネギ!?」
「生憎、俺は政宗様を置いて逝く気はさらさら無ェんでな」
「いやじゃなくてネギ!え!?今俺様ネギに弾かれたの!?」
「俺が死ぬ時…それは政宗様が天下をお取りになった後だ!」
「話を聞け過保護ォォオ!!!!」
「過保護じゃ…いや、過保護かもしれねェな!!」
「何自信マンマンに…ッ!?」

 ネギを構える小十郎に食ってかかろうとした瞬間、佐助の頬をチリッと何かがかすった。
 それに小十郎も気が付いたようで、木々の向こうへ視線を移す。

 葉と葉が擦れて、かさりと鳴った。

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あきゅろす。
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