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輪廻と嘘(小十佐/現パロ)
「ねぇ」

 夕暮れの橙が窓からさし込む数学準備室。
 背広を着た大きな背中にそっと語りかけた。

「こんなお話…知ってる?」




「昔…二人の男が居たの。一人は国主の側近、一人はある国の忍。二人は敵国同士だったけど…陰で愛し合ってたんだ。男同士なのに変な話でしょ?ある日…ついにその二国の戦が始まっちゃうんだ。愛し合ってても国を守らなきゃいけない。だから二人はついに刃を交えちゃうんだ。二人とも腕の立つ人物だったからなかなか戦いは終わらなくてね…。……でも、決着はついちゃうんだ。側近の武士が忍の腹をグサリ。忍はひとたまりもなかったみたい。でも、最期の最期に武士が忍に口付けて来たときに、とっておきの猛毒を口移しで武士に飲ませたんだって。二人は即お陀仏になっちゃうんだけど、その死ぬ直前に…平和な時代で出会う事があれば、もう二度と離さないって約束したんだ。……どう?感動的じゃない?」





 ふわりと笑んで問掛ける生徒の顔を一度も見ず、教師はワークを点検しながら溜め息を吐いた。

「てめぇの語るその話が本当ならな…。ただでさえてめぇの話は信じられねぇってのに、今日…エイプリルフールに話されて信じられるわけ無ェだろうが」
「あ、酷ぉい。折角春休み中なのにわざわざ学校に来たげたのに」
「頼んでねェ」
「うん。俺様も頼まれてないけどさ」





 教師…左頬に大きな傷のある黒髪を全て後ろに撫でつけた数学教師に、生徒…茜色した髪の学ランの下に迷彩柄のシャツを着込んだ生徒はそっと寄り添った。



「こんな話、俺の妄想だったら良かったのにね…片倉先生」





 殺しあった愛の記憶など嘘だったら良かったのに。

 どうして。



 彼の人に輪廻の記憶は無いの――?





End.

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あきゅろす。
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