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母国情緒






エリ・キタハラの新作は、艶やかな黒地に鮮やかな花が散った、どちらかと言えばレトロなデザインの浴衣だった。
同ブランド初の和服ということで、メディアでも大きく報じられたらしいが、女性の衣服よりもその中身に興味がある僚にはどうでもいい話である。
新作がデビューに至るまでの経緯を蕩々と語られたところで、立て板に水。
熱っぽく口を動かす絵梨子を横目で見ながら、そんなに思い入れがある作品をなぜよりによって香にプレゼントするのか、とぼんやり考えていた。


「どう?」


しっかりと着付けた香が、首をかしげて問いかけてくる。
しかし、意識は浮上したまま戻ってこない。むしろますます上の空だ。

いつもは好き勝手な方向にはねているくせ毛を器用にアップにし、際立つうなじ。
日本人にしては茶色い髪が意外に和装に馴染んでいるから不思議だ。


「ほら、冴羽さん。感想を聞かせてよ。似合ってないとは言わせないわよ」


絵梨子にせっつかれ、香も期待にほんのり頬を染めてこちらを見つめる。
ああもう。それどころじゃないからほっといてくれないか。


「安心しろ。女に見える」


適当に呟いた言葉に、2人が揃って頬を膨らませた。
だって仕方ないだろう。考えなくてはならないんだ。


(美味しそうに着飾った女をいかに美味しく頂いてしまおうか?)


可及的速やかに対処すべき要件だ。







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季節外れもいいとこな、浴衣ネタ。和装てなんであんな色っぽいのでしょう。
海外育ち(?)の僚ちゃんも、きっと弱いはず!

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あきゅろす。
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