ペッパー警部 依頼を果たした後だから。 あんたに惚れ直したばっかりだから。 少しくらい、素直になっちゃうのも、仕様がないでしょ? あぁらしくない、らしくないと思いつつ僚のジャケットのポケットの中に手を忍びこませる。ポケットの中で触れた手が、ピクリと一瞬固まってすぐに繋がった。 優しく握ってくれた手を握り返せば、もっと強く握られる。 あたしの顔はきっと真っ赤。ねぇ、僚もそうだといいのに。恥ずかしくて確認なんか出来ないけどね。 時間が遅いせいか、街道を歩いていてもすれ違う人すらない。それがいい。2人がいいんだ。こんなチャンスめったにないもの。あぁ、僚もそう思っていたら。 「…!」 ただ握っていた手が少しゆるんかと思うと、指と指が絡まって、これってあれでしょ。いわゆる… 「香」 「な、なに」 暗くて良かった。耳まで赤くなっててもばれないだろう。声がひっくり返ったのは隠しようがないけれど。 「香」 もう一度囁かれた。 僚に名前呼ばれるの好きだな、と思いながら恐る恐る視線を少し上げた。街灯の光で伸びた2人の影は、もうほとんど1つになっている。 こんなに近くで僚の顔、見たことあっただろうか。 そっと目を閉じた。 閉じた瞼にそれとわかるくらい影が落ち、すぐに離れる。 え。まだ何も 「ごめんなさい、お邪魔したわね」 野上冴子!!! あっと思ったときには手も放し僚との距離50センチメートル。夢から覚めた気分だわよッ 「いいのよー。あたしのことは気にせず、続けてくれたら」 「なんのこと?僕ちゃんわかんなーい」 悪びれない女刑事に、彼女にじゃれつくパートナー。 まったく。 完全に。 いつも通り。 もう!もう!もう! 邪魔しないでよッ!!!! [戻る] |