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稲妻
笑顔のあの子は最高に、 (雷門→吹雪)

※統合吹雪


†雷門→吹雪








茶色の紙袋を最初に持ってきたのは、木野さんだった。

僕は何が入ってるのって聞いたら内緒だよって笑顔で言われてしまい、その日の部活が終わる頃にその紙袋は雷門さんに手渡された。




次の日、やけに疲れた顔をした雷門さんはあの紙袋を持ってきていて、やたらとあくびを漏らしていた。

音無さんに半ば押し付けるように渡すと、疲れてるからって帰っていった。
その音無さんは浦部さんと塔子さんと一緒に部活中ずっと部室に籠もって、部活が終わると汗だくになってそれを鬼道くんに手渡した。




翌日、疲れた顔を見せていない鬼道くんはまたあの紙袋を持っていて、風丸くんにそれを渡した。

その日は風丸くんが壁山くんと木暮くんと立向居くん、それから綱海さんと部室に籠もってしまった。
部活が終わるとみんな疲れきっていて、立向居くんが紙袋を一ノ瀬くんに渡して今日は解散。
やっぱり気になって風丸くんにあれは何かなって聞くと、また内緒だって秘密にされた。

……ちょっと、おもしろくない。




また翌日、やけに楽しそうな一ノ瀬くんとは対照的に土門くんはげっそりしていて、あの紙袋は土門くんの手元にあった。

その日の部活帰りに土門くんが染岡くんに紙袋を渡してるのを見た。
気になる。
染岡くんに強めに押してたずねると、お前にゃ関係ねーよって逆ギレされてしまった。
急に悲しくなって、一言謝ると染岡くんはすごく情けない顔をして猛スピードで帰ってしまった。




日曜日、散歩中に会ったアフロディくんとファミレスに入ると別の席に染岡くんを見つけて、どうやら半田くん達初期雷門メンバーと一緒のようだ。
見慣れた紙袋はやっぱりあって、それを持ってる松野くんは涼しい顔なのに他のみんな突っ伏している。
特に染岡くんは遠目からもわかるほど落ち込んでいるようだ。

関係ないって言われたけど、やっぱりなんだろう、あれ。

少しするとキャプテンと豪炎寺くんが合流して、そんな染岡くんを励ますようにちょっと話をしたら二人はさっさとファミレスを出て行った。
紙袋は豪炎寺くんが持っている。


「………あれが噂の秘密物?」
「うん……もしメンバーみんなに一回ずつ回されてるなら、僕、外されてる」
「大丈夫だよ、吹雪くん」
「え?」
「笑えばいいんだ。きっとみんなの持ってるあれは、君を笑顔にするものだから」
「アフロディくん…」
「僕もそうだから、きっとみんなもそう。君の笑顔が見たいんだ」


そう言って頭を撫でてくれたアフロディくんの前で、情けないことに僕は泣いてしまった。

ごめんね、まだまだこんなに弱い僕で。










「吹雪っ!」


月曜日、ちょっと落ち込み気味のまま部室へ行くとみんなが笑顔で出迎えてくれていて、僕が口を開く前にキャプテンはずいっとしわくちゃの紙袋を僕に押し付けた。


「………これ、なに?」


もう過去何度か失敗している質問をおそるおそるしてみると、キャプテンはにかっと笑って、開けてみろって言う。

ふやけてやわらかくなってしまった紙質の紙袋をそっと開けて手を入れるとふわりとした触り心地のそれが指先に当たり、そうっと取り出してみるとそれはマフラーだった。
落ち着いた水色のマフラーはよく見ると所々がいびつで、綺麗に編まれてる部分とほつれだらけの部分があり、どうやら手作りのようだ。

はっとして部室を見回すと机の上に編み物の本が三冊ほど置かれていて、またみんなに目を戻すと何人かが申し訳なさそうに苦笑していた。
染岡くんにいたっては顔を真っ赤にさせていて、この間は悪かったとかなんとかぶつぶつ言い始めた。
視界がじんわりと霞む。


「…………キャプテン、僕、誕生日じゃないよ」
「いいんだよそんなこと!前々からみんなで計画してたんだ、お前に何かしてやりたいって」
「ぼく、に、」
「あぁ!でもさ、何すればいいのかわかんなくって……だからみんなで作ったんだ。北海道帰った時、首元に何もないんじゃ寒いしな!」


みんなで繋げて、ちょっとずつ編んで、カラフルでもなければちっとも上手くない毛糸マフラー。
まだ手の中におさまっているだけなのにとても暖かくて、それに視線落とすと同時に零れた涙が毛糸を濡らした。

そうだ、泣いちゃだめだろ、笑わなきゃ。
アフロディくんも言ってくれたじゃないか。
みんなに心配かけちゃうよ、笑うんだ、笑わなきゃ。
こんなに嬉しいのに笑えないなんて馬鹿みたいじゃないか。



「ありがとう。あのね僕、今すごくサッカーがしたいんだ」


一緒に、サッカーしてくれる?


「もちろんだ!」




その日僕は、いびつなマフラーをつけてサッカーをした。

笑顔なのに涙が止まらなくて、泣いているのに笑ってて、それがすっごくかっこわるいってわかってた。
だけどやっぱり嬉しくて、胸の奥からアツヤの笑い声まで聞こえたほど幸せで、キャプテン並みの大声を張り上げて笑いながらフィールドの端から端までをみんなと駆け抜けてサッカーをした。




悲しい時は泣いて、辛い時は痛がって、それでもみんなが好きだというのなら、僕はどこまでも笑顔でいよう。












――――――――――――――――
三期始まる前にどうしてもやっておきたかった吹雪愛され話^q^

拍手サイズにするつもりが予想外に長引いた……愛を詰めすぎたかなぁ、まだ足りない気がするのに←←←



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