稲妻 高校生パロ1 ※捏造万歳!^q^ 「え……僕に?」 『えぇ、そう。奨学金も出るのだけど……どうかしら?』 中学三年生のとある冬だ。 珍しい人からの連絡を受けた僕は先生やサッカー部のみんなやクラスみんなに見守られながら、ずっと書けずにいた進路希望調査にやっとペンを入れた。 答えは、 「イエス、かな」 ―――――――――――――― お前らが落ちるわけないだろ、大丈夫だ気張れよ、絶対いけるって! それらの励ましは大変嬉しいのだが、合格発表当日に言われても後の祭りだ。 まぁ励ましてもらってるわけだからそんなこと言わないけどさ。 俺と豪炎寺の肩をそれぞれ抱いた円堂は俺達の間から顔を出して、合格者の張り出し板をサッカーのように真剣に見ている。 そんな円堂に豪炎寺は苦笑するが、さすがに俺はちょっと出来ない状態だ。 だって豪炎寺はともかく、俺は落ちたらどうしよう。 「あまり心配するな風丸。お前だって落ちやしないだろう」 「そりゃ、中学だとそこそこの成績だったから先生にも大丈夫とは言われたさ……でも入試テストを自己採点したらボロボロだったんだぜ」 「あの問題でか?」 「お前と同じ頭じゃないんだよ鬼道」 いよっしゃああああっ!!なんて聞き覚えのある雄叫びの方へ目を向けると、馴染みのあるピンク頭が嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねていた。 それを見て血の気が引いていく俺の肩を鬼道はポンと叩いて笑顔で言った。 「染岡ですら受かったようなんだから、お前が落ちているわけないだろう」 むしろ染岡ですら受かったのに俺だけ落ちてたらどうするんだよ。 雷門高校一本で受けたんだ、ひとりだけ私立とか絶対嫌だからな! 「待ってろ風丸、今お前の探してるから、すぐ見つかるからな!」 「円堂……そのセリフ五回目だよ…」 もうすでに名前を見つけたのだろう、いつの間にか俺は円堂と豪炎寺に挟まれて、二人がかりで名前を探されていた。 自分で探す気はもう起きない。 (そもそもなんで一般で受けたんだろう……豪炎寺が一般だったから便乗した?浅はかすぎるだろ俺……円堂みたいにスポーツ推薦で行けばよかった) 「夏美の推薦で入った綱海にさぁ、絶対入ってるって言っちゃったんだ……入学したら俺の代わりに謝っといてくれ円堂」 「あきらめるな風丸!最後の一枚がまだ残ってる、絶対名前あるって!」 「ああああ高校生活終わったあああ」 さすがの鬼道も心配になったのだろう、ここにきて口数がぐんと減った。 せめて鬼道と同じ普通推薦でもやっとけばよかったなぁ……宮坂に言っておいてやらなきゃ、推薦にしろって。 「もうやめてくれ二人とも、いいんだ、俺私立に行ってもお前らの仲間だって信じてるから…」 「あっ」 「あ?」 「あったぞ」 「……………え?」 円堂と豪炎寺がびっと指をさす。 とてもとても下方を指さす。 二人の間から抜け出して人の中をかき分けて最前列に立ち、二人が言う場所に目を凝らした。 「…………あ」 パソコンでタイピングされたゴシック体文字の羅列の下の隅っこ、合格者達の最後尾。 後から付け足したのかそこだけがマジックペンで書かれた汚い文字で、余白には「先生が入れ忘れたらしいから書いとく。合格おめでとう!綱海より」とこれまた汚い文字があった。 ではこの列を乱す汚い文字を解読しよう。 受験番号102番 風丸 一郎太 「…………ったああああああああ!!あった!あったぞ俺の名前!」 「うおおおおおおやったな風丸うううううううううう!!」 「やったよ円堂おおおおおお!!」 「やっぱり風丸が落ちるわけなかったな」 「あぁ。豪炎寺、染岡、風丸……これで全員か?」 「いや、確かあとは…」 「おおーい!円堂くん!みんなぁー!」 赤い髪の外ハネを揺らしながら大手を振って走ってくるヒロトと、その少し後ろを付いて走る飛鷹がいた。 俺達も受かったよってヒロトが叫んで、ギリギリのところで受かったのが嬉しかった俺は円堂よりも先にヒロトを抱きしめた。 おめでとう、ヒロト!飛鷹! 俺もおめでとう! 「不動はさっき連絡がきたし、佐久間は源田と帝国へ………よし、これで全員だな」 「わかった」 「…誰かに連絡するのか?豪炎寺」 「あぁ……吹雪にな。俺達は全員受かったぞって」 「おっ吹雪に連絡するのか?」 「あぁ」 「よし!じゃあみんなの写メ送ろうぜ!」 染岡を呼んでくると言い残して、円堂はだっと走り出した。 どうやら写メを送るのは決定次項らしい。 「………」 「どうした?豪炎寺」 「いや……吹雪も一緒だったらな、なんて思っただけだ」 「吹雪かぁ……」 そういえば、俺も数ヶ月前から連絡をとっていなかったな。 「そうだな。でもまたその内会えるさ」 「……あぁ、そうだな」 撮る場所は校門前で。 そういう円堂に従って撮った写真を、豪炎寺は吹雪に、円堂はその他みんなに送った。 入学式の一週間前の話だ。 ごとん。 階段を下りてすぐ、カートを床に置く。 荷物は少なめのはずだけど、階段を下りるために持ち上げるには少々重すぎた。 「ふぅ……やっぱり本州の方がちょっとあったかいなぁ」 「吹雪さん!吹雪さーんっ!!」 「あ、虎丸くん!」 空港に着いたばかりの僕を出迎えてくれたのは虎丸くんと、彼のお母さんだ。 しばらく見ないうちに大分身長が伸びてて、僕に思いっきり抱きついた彼との体格差にびっくりした。 おかしいなぁ、僕も結構鍛えてるんだけど。 「んもぉ、結構待ちましたよ!」 「僕にそう言われてもね……それより伸びたよね、今年で中二?だっけ?」 「はい!吹雪さんは高校生になるのに相変わらず小さいんですね」 「一言余計だよ」 いつかの豪炎寺くんよりあるんじゃないかってぐらい成長していた虎丸くんに悔しいと思いながらも、素直に荷物をお願いする。 持ち上げるのに苦労した僕と違って、彼はひょいと肩に持ち上げてみせた。 「まぁ吹雪くん、元気そうね」 「はい、お久しぶりです。本当に、僕がお世話になってもよかったんですか?」 「私も虎丸も大歓迎ですもの、気にしないで」 「おーい!タクシーこっちー!」 僕の荷物を持って随分前を歩いていた虎丸くんはいつの間にかタクシーを捕まえていて、遠くからぶんぶん手を振ってくれている。 本当に昔のまんまなんだなぁ。 「じゃあ…よろしくお願いします」 「ふふふ、はい」 高校は確か雷門中の近くにあったはず。 ぼんやりする記憶の中から虎ノ屋と雷門中への道筋をしっかり思い出そうと、僕はタクシーに乗ってすぐ目を瞑った。 なぜならそれが、向こう三年間の僕の通学路になるからだ。 ―――――――――――――― 円堂さん達の一年前に夏美嬢の推薦で入学した綱海と、同じ方法で入学してきて虎丸のとこに居候する吹雪。 まさに俺得です!笑 ところで飛鷹さんって円堂さん達と同じ学年、ですよね……?^q^ [前へ][次へ] [戻る] |