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Tales
たとえばそれは、 (TOA)


※※ルークいじめ、超哀れ※※












たとえばそれは、なんだろうか。





「……ただいまっ」

震える体を叱咤して、みなの待つケテルブルクホテルの部屋の扉を開く。
その声に笑顔は明るく、そして当たり前である帰宅のことばに、反応はない。

いや、あるにはあるのだが、それはただこちらを一瞥しただけのものだ。

「………っ」

さすがに、二度ただいまと言い直すことはしない。
ポジティブな者ならするんだろうが、今のルークがやればそれだけで反感を買ってしまうのだ。

「おつかい、どうも」
「うん。あの……」
「お疲れ様です。もう休んで結構ですよ」
「…ぁ…」

抱きしめるように両腕で抱えていた紙袋を、ジェイドはあっさりと持ち去った。
一度も目は合わなかった。
合わせてくれなかった。

「ルーク、んなとこに突っ立ってんなよ…」
「あ、あぁごめん…」
「ったく寒い寒い……あぁ、ただいまー」
「おやぁ、おかえりなさい。随分白くなりましたねぇ〜」



ずきん



「ガイおかえりー!アニスちゃん寂しかったってか暇だった感じ?」
「雪が肩に積もってますわよ」
「え、本当か?うわっつめてっ」
「大丈夫?私が払って…」
「いいいいやっ!いいっていいです!」
「おや、なら私が」
「旦那もやめてくれ」

よし、今だ。

「あ、ガイ!じゃあ俺が…」
「いいよ、お前に余計な苦労かけちまうだろ?自分でやるって」



ずきん



「…………そっか。なら、いいんだ」

「あぁ、ありがとうな」



ずきん



「ルーク、顔色が悪いわ。部屋で休んできたらどうかしら」
「おや、では後々に起こしてしまわないよう、今日はひとり部屋にしなさい」
「…………うん、そうする、よ」



ずきん




この時の二人の声音は、ひどく無機質だった。












おかえり、なんて当たり前の挨拶だ。

ただその当たり前は、俺には返ってこなかった。



「……は、ぁ」

ぼすんっと勢いよくベッドに正面から倒れ込む。
電気はすべて消したが、雪が月の光を反射し続けるせいでそれなりに部屋は明るい。
その光景は美しくもあり、そして憎らしかった。

「……薬、飲も…」

いつものことだとわかっている。
だからルークは自分用に買った薬を、あの紙袋と一緒に入れなかった。
みんなといるのが辛くて、おつかいの固定係になって……そしておかえりの代わりに、休めの一言を武器に買ったものを奪われる。
それが、いつものことだとわかっている。
わかっていた。
わかっていることが、こんなにも辛いなんておかしくないか。
それとも、この考えがまだまだ甘いのか?
わがままなのか?呆れるのか?
暖かいものが待っていないとわかっていることが、こんなにも辛いと思うのは間違いなのか。

「………違う、んだろうな…」

水もなしに胃薬を飲む。
頭のどこかで窒息死できたならと考えなくもないが、自分は見事にさらりと飲み込んでしまった。

ルークはわかっている。
自分はただ、仲間からまだ嫌われているだけなんだと。
以前のように棚に上げて、世の中すら非難するようなことはしない。
そんなもの、虚しいだけだったんだ。

「………なぁ、アッシュ……俺は、なんなんだろう?」
「………」

いつからか部屋の隅にいたアッシュへ呼びかける。
なぁアッシュ、俺さ、最初からお前はそこにいたって気付いてたんだ。
だからそんな、なんで見つかったんだって顔、やめてくれよ。
俺が嫌ならいっそ近寄らないでくれていい、頭痛なら平気だから連絡はすべて回線だけでいい、だから、だから、

「なぁアッシュ、俺はなんだと思う?」
「……人だ」
「どうでもいいよ、そんなの」
そんな気休めの嘘、どうでもいいよ。
「…………そろそろ出ろ。夕飯、食い損ねるぞ」
「もう食い損ねてる」

時計は普段の夕飯の時間から大分経っている。
今日はとうとう、ガイすら呼びに来なかった。
あはは、笑える。

ギシ、 ベッドのスプリングが鳴る。
アッシュの影が、髪が、仰向けになった俺に降ってくる。

「泣くな」
「泣いてねえ」
「泣かないでくれ」
「泣かねえよ」
「泣き顔は見たくない」
「泣き顔なんか晒さない」
「笑っていてくれ」
「無理だっつーの」
「泣くな」
「泣かなきゃ、アッシュだっていなくなっちまう」

ははっと笑うと、頬がうすら暖かくなった。
そしてアッシュがすごく、痛そうな顔をした。

アッシュが苦しんでる、グミあげなきゃ、

「……なんで、アッシュは俺の傍に来てくれるんだ…?」
「……苦しいって、お前がうるさいから」

「………ごめん」

体を俺に近付けてくれたアッシュを抱きしめる。
暖かさは伝わるのに、アッシュは抱き返してくれない。

その体がふるえる理由が、時折漏れる呻きに似た声が、血が出るまで強く握りしめられた拳が、どうしてそうなるのか俺にはわからない。

いや、わかるよ。

わかるからわかりたくない。
認めてしまえば、もう心の抑えが効きそうにないからだ。

「涙だけは、無駄なほど出るよ」




(だけど泣けないんだ。泣いちゃだめだから、優しさをもらっちゃダメだから、抱かないでくれ、あっしゅ)







たとえばそれは、呪いにも似た決意だ。










―――――――――――

………と、こんな冷たいいじめをルークが受けてる夢を見まして^^←最低

深夜で働かない頭を殴りながら書いたから意味わからない!
でも晒す!!←←←←


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あきゅろす。
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