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走れ激痛




ガックンッ

「――――…!!」

体が跳ねた。
目を開くと入ってくる眩しい光に思わず目を細める。

――――やっぱり、夢だったんじゃないか――――

暫く呆然として、天井を見つめる。

消えてしまったあの子供…
よくよく考えれば、アイツは昔の俺にそっくりだった。
自分にそっくりな奴が消える夢なんてよくない予兆を示しているように思える。
(わけわかんないことばっかし言っていたけど)
しかもその前は車に轢かれる夢…
気を付けないとホントに死んでしまいそうな組み合わせだ。

でも…夢で、よかった…

安堵がじわりと身体中に広がる。
痛みを伴う夢なんてものがあるのかは知らないが、とにかく生きているんだ。

さっさと忘れてしまおう!
トラウマにしかならないような不吉な夢なん、………
――――…は?

とてつもなく大きな間違いに気付いた。

――――天井が、木?

目を見開いて天井を凝視するが自分の部屋の天井に似ている所はみじんもない。

いつの間にリフォームしたんだよ!?
寝てる間に!?
んな馬鹿な!?
しかもなんか…堅い。
ベッドじゃないぞこれ。

布団の下の手でシーツを擦れば堅い感触。
敷布団の感触だ。
鼻を鳴らせば香るのは畳の香で、どうやら和室にいるらしい。

考えられるとすれば寝てる間に誰かに場所を移されたか…?

起き上がって確認しようとする。
――――が、

「!?―――――…!!?」

激痛が身体中を駆け巡った。
動かそうとしても痛くて動くに動けない。

「…!?(なっ!?)
Σ……!?(声が!?)」

何が起きたのか全くわかんねぇ!
何!?なんなんだ!?
喋ってるはずなのに、声が出ねえ!!

状況を判断できない俺はひたすら声の出ない口をパクパクさせて動かない体に困惑した。

「!やっと起きられたか!!」

狭い視界に突然入ってきた栗毛の髪に赤い鉢巻きの男。
見知らぬその男に俺はさらに混乱する。

「(誰だお前…!!!俺はどうなったんだ!?何で体が動かない!?何で声が出ないんだよ!?)」

必死で訴えるが口から出るのは音のない吐息で苦しくなるばかりだった。

「――――?
…声が出ないのでござるか?」

男が困ったように眉を寄せた。

そりゃこっちがしてえよ!!
何がなんだかわからない…!!
夢がまだ続いてるっていうのか!?
3連発ってどんだけだよ…!!

「―――しばし待たれよ!
動くでないぞ!?よいな!!」

いやいやいやいや!
よくねーから!
よくねーからァアア!!
ちょ、待て待て待て!
待てっていってんだろォオオ!!

そんな俺の気も知らず男は立ち上がって視界から消えた。
ドタドタと走ってゆく震動が畳に横たわる体に響く。

くそっ!くそっ!
なんなんだよ一体…!!

男の忠告を無視して重い体を再び起こそうとした。
だが腰あたりがミシミシと鈍く痛み、腹筋に力が入らなくて堅い布団に身を落とす。

「(いっっっってぇ!!!!)」

めちゃくちゃ痛い!
痛い痛い痛い痛い!!
身体中の骨がバラバラになってしまったみたいだ。

「(こんにゃろ…!!)」

何がどうなってやがる!!
これじゃあ夢じゃなくて現実じゃないか!!

痛みは確かに存在して嫌でもこれが夢でないということを思い知らされた。

じゃあ何か?あの車にひかれる夢も、あの変な子供が出てきた夢も、現実ってことか?

「(そんな馬鹿な…)」

…あの餓鬼の言う通り死んだ俺を生き返らせてくれたとしたら?

「(違う…俺は死んでない…
死んでねぇ…!!)」

ぐぐぐぐ…

腹筋に力が入らないなら手で起き上がるまで!

床に肘を付き、身をゆっくりと起こす。
腕にも痛みが走るがそれどころじゃなかった。







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あきゅろす。
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