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一色モノクロ世界




眼が
覚めた


なんで、…

言葉も出なかった。
絶句だ。
目の前は死ぬ直前まで見てたものと全く同じ。
手首に当たる無機物の感触、尾骨に当たる地面、
ただ違うのは迷彩のお兄さんがいないことと、ちゃんと服を着させられていること。

そして、痛みがないこと。

これは一体どういうことだ…?
転生の次はタイムリープ(記憶を持ったまま過去に戻ること)か?
いやでも…

微かに部屋に残る雄の匂い。
それと血独特の鉄の匂い。

記憶に色濃く残る記憶は語る。
犯されたという現実。
突き立てられた苦無。

…考えられるのは、

俺が…生き返った…?

…バカな。
バカな!
信じられるかそんなこと…!!

「………っく、」

じゃらっと上に拘束されている手を手枷に、血が出るほど食い込ませてみると、ちゃんと痛みはあるみたいだ。
念のために頭を後ろの壁にぶつけてみる。
…普通に痛い。

「なんで…なんでだよ…くそっ…」

二度目があってたまるかこんなこと…!
俺の体は一体どうなってるんだ!?
死ねない体なのかよ…!?
気味が悪い!

…こんな…
俺にどうしろというんだ…

体から力を抜いた。
頭を項垂(ウナダ)れ、灰色の石の床を見つめる。

ただただ見つめて、俺に起こった残酷な現実に悲しむしかなかった。

世界はいつでも俺を突き放す。
モノクロだ。世界はモノクロだ。
暖かい赤でもなく、冷めたい青でもなく、明るい黄でもなく、
…無関心な、モノクロ。

俺から吹き出る血は赤だった。
それがモノクロな世界に際立って見えた。
俺は歓喜、でもそんな時でも世界は俺に無関心なモノクロを決め込んだ。

早く終わらせてくれよ…
なんでまたこんな世界で生きなきゃなんねぇんだよ…!
生きてても色がない世界なんて退屈なんだよ…



もう一回、もう一回殺されたら死ねるだろうか…?



…わからない。
答えは闇の中だ。
死なないとわからない答え。

絶望
失望
自己嫌悪
憎悪
苦悩
不安

色んな感情が自分の中を飛び交った。

まさかこんな思いをまたするなんて…思わなかったよ…













「…………やっぱし生き返ってるねぇあんた。」

「!!」

聞き覚えのある声に、バッと頭を上げた。
そこにいたのは案の定、

「……猿飛、佐助…」

その人だ。
部屋の中央で腕を組んで疎ましげな目で俺を見下している。

いつの間に…
少し見上げればそこには四角い穴。
前に現れた穴からまた入ってきたのかと静かに納得した。

お兄さんは最悪だと言わんばかりにため息をつく。
それは俺がしたい。

「……もう一度…。」

俺は小さく呟く。
それでもお兄さんの耳ならば聞こえるだろう。

「…は?なにを?」

予想つくけど、とお兄さんは続け、俺の方へと歩み寄ってきた。

「殺せ…俺を…。」

キッと睨み付ける。
正直八つ当たりだ。

「…へぇ、それが素?
威勢がいいじゃない。」

ニヤリとお兄さんの口角が下品に上がる。
光悦とした表情だ。
何が嬉しくてそんな笑いをしてんのか…
てめえだってそれが素だろう。
わかってたことだけど、お兄さん性格わりいな。

…といいたいが、そんなこと今はどうでもいい。

「っるせー…。
聞こえなかったのか。
俺を殺せって言ってんだよっ…!」

「そう吠えるなって。
殺せ殺せって言われると殺したくなくなるじゃん。」

さっきの顔はどこへやら、ニコニコとした笑顔で俺の目の前でしゃがみ、頬をついた。
そして俺の目を真っ直ぐ見据えてくる。

「…………んだよ…」

いつもなら笑顔を張り付けるところだが、そうはできなかった。
お兄さんはじろじろ俺の顔を見るとしばらくして口を開く。

「いやあね?
そそるなぁって思って♪」















「…………きめぇ。」

「自覚してるから♪」

そういって一層笑みを深くした。
あんたみたいな性格の奴苛めんの大好きなんだぁ俺様♪とかなんとか、続けざまに言う。

こんなときにこいつは…!!

「そんなことどうでもいいから、俺を早く殺s
「殺してもいいけどね、絶対にあんたは死なないよ。って自覚はないの?」

「…は、?」

俺は唖然として、お兄さんを見返した。

自覚…?
絶対に…死なない?




(あってほしくない現実)

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